低コスト運営で編集権の独立を--ライブドアに聞くブログメディアの優位点

鳴海淳義(編集部)2010年12月01日 11時51分

 ライブドアは11月30日、ブログメディア事業に関する発表会を開催し、今後の事業戦略について説明した。

 ブログメディアとはライブドアの定義によれば、有名人や個人の日記とは一線を画した、オピニオン重視のブログサイト。社会的なインパクトを持ち、公共性のある議論を生み出す場を形成するのが目標だとしている。その特徴は以下の4点だ。

  • ニッチジャンル特化
    ゲームならばオンラインRPGだけ、グルメならば豚骨ラーメンだけといったように、網羅性よりも専門性を重視する
  • 高頻度での更新
    週刊や月刊サイクルではなく、1日に数回更新する
  • ローコスト運営
    正社員の記者、編集者を置いたり、都心にオフィスに構えたりせずに、運営コストを低く抑える
  • 独自ドメインでの認知確立
    ポータルサイトのいちコーナーではなく、メディアとしてブランドを独立させる

 これら4点がライブドアの考えるブログメディアの特徴であり、既存メディアに対する優位点だという。ライブドアのブログメディア事業室長である田端信太郎氏は、低コストで運営し、損益分岐点を引き下げると、「本当の意味でメディアの自由度が増す」と述べる。

 「たとえば広告を売っているメディアはIT系ニュースサイト、テレビ、新聞を含めすべて、“編集権の独立”という言葉はありながらも、実際のところは当然、大口スポンサーにとって良くないことは書きにくい。あるいは新製品の発表会などは典型的ですが、良く書いてほしい、良く書かねばという力学が構造的に働く。これに対してブログメディアは固定費を抑えているので、(特定企業の広告ではなく)アドネットワーク型あるいは成果報酬型の広告で成り立たせられる。そのため編集権の独立がお題目ではなくなり、書きたいことが書けるという自由度が担保される。読者から見たときに、書き手が本当に利害や打算なく、本心から思ったことを書いているかどうか。そういった信頼性がブログメディアの一番の魅力だ」(田端氏)

 海外ではガジェット専門ブログ「GIZMODO」や生産性向上ブログ「Lifehacker」など多数の人気ブログを抱えるGawkerMediaが成功事例だ。運営する8つのブログ全体で月間1300万人の訪問者を集める。田端氏は同社について、「ニッチジャンルへの特化と高頻度更新がブログメディアへのアクセスをもたらした勝ちパターン」と評価した。

  • ライブドアのブログメディア事業室長の田端信太郎氏(右)とBLOGOS編集長の大谷広太氏

 ライブドアはポータルサイト「livedoor」、インフラ事業「DATAHOTEL」を持つことから、複数のブログメディアを低コストかつスピーディーに軌道に乗せられるという目算がある。すでに24のブログメディアを開設しており、1月にオープンした投資ブログメディア「Market Hack」は早くも黒字化を達成したという。そして同社がいま特に力を入れているのが、政治経済分野の分析記事やオピニオン記事を集約した「BLOGOS」である。

 BLOGOSはネットでの情報発信に熱心な政治家をはじめ、法曹、金融、医師、官僚など各分野の専門家のブログ記事を厳選し、掲載している。参加ブロガーは延べ250人。

 ライブドアのメディア事業部ポータルグループに所属し、BLOGOS編集長を務める大谷広太氏は、「思想について上下左右の別なくオピニオンをすくいあげている。国会議員と10代のブロガーの意見が並ぶフラットな面白さがある」と話す。ページビュー(PV)は順調に増加し、2010年9月の月間PVは1400万に達した。1年間の月間成長率は平均20%だという。閲覧者数は月間90万人にのぼり、書店で販売されている政治・経済誌を超える影響力を持つとしている。

  • BLOGOSと主要政治・経済誌の比較

 2008年10月〜2009年9月の政治・経済誌の平均発行部数をみると、1位の「文藝春秋」は63万部、2位の「潮」は40万部。これとBLOGOSのユニークユーザーを比べると右のようなグラフになる。大谷氏は「単純に比較できるわけではないが、BLOGOSは政治・経済誌に匹敵する影響力が出てきたと自負している」と述べた。

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