日本エイサーは、3D対応ノートPC「AS5745DG-A54E/L」を12月3日に発売する。「NVIDIA 3D Vision」に対応した15.6型ノートPCで、価格はオープンプライスだが、市場想定価格は9万9800円前後としており、アクティブシャッター方式を採用した3Dパソコンが10万円を切る価格で購入できることになる。
日本エイサー社長のBob Sen氏は、「新たな技術は高価である。それを企業努力によってリーズナブルにするのがエイサー。コストパフォーマンスを追求できるエイサーだからこそ、10万円を切る価格で3DノートPCを発売できる」とし、日本における3Dパソコンの普及を加速する姿勢を示した。
BCNの調べによると、2010年10月の販売台数において、3Dパソコンの構成比は、わずか1.5%に留まっている。3Dパソコンの機種数がまだまだ少ないという背景はあるが、業界が当初想定した構成比よりもはるかに低いのが実態だ。形態別に見ると、それでもデスクトップPCでは3D対応機が6.1%の構成比を占める。しかし、日本エイサーが参入するノートPC分野ではわずか0.5%だ。日本エイサーでは、独自調査により「ユーザーが3Dパソコンを購入しない理由」として「価格が高い」点が大きいことを明らかにした。
日本エイサー マーケティングコミュニケーション課マネージャーの瀬戸和信氏は、「3Dデバイスを購入していない人のうち58%が、その理由を価格が高いからとしている。日本エイサーは、過去2年間に渡って、日本のPCの価格が高いということを指摘してきた。3Dパソコンにおいても、安売りではなく、コストパフォーマンスの高い製品を投入する」と戦略を語る。
実際、富士通の3Dパソコンの実売価格は、ノートPCで11万円前後、デスクトップPCで14万円前後。同じアクティブシャッター方式の東芝の上位モデルでは20万円前後程度となっており、日本エイサーが設定してきた10万円を切る価格とは大きな差がある。
今回、日本エイサーが十分に競争力のある価格設定を行えたのには、いくつかの理由がある。ひとつは、世界第2位という出荷台数を背景にした部品調達力を生かしたコストダウン効果があること。そしてもうひとつは、3Dパソコンに最上位モデルのスペックを搭載するのではなく、必要十分なスペックに抑えていることだ。
例えば東芝の場合、3DノートPCがCPUにCore i7-740QM(1.73GHz)を搭載し、Blu-rayスーパーマルチドライブを搭載しているのに対して、日本エイサーの3DノートPCは、CPUにCore i5-460M(2.53GHz)を採用。Blu-rayスーパーマルチドライブは再生専用とした。さらにGPUは、東芝がGeForce GT 350Mであるのに対し、エイサーは最新の製品となるGeForce GT 425Mを採用する構成とした。「最新のテクノロジをできるだけ早く、適正な価格で市場に届けるのが日本エイサー。その姿勢を示したもの」(瀬戸氏)と、今回の製品の位置づけを示す。
「3Dパソコンは今年度100万台の出荷が見込まれている。これが5年後には7500万台となり、市場全体の40%を占めるものと見られている。今年は3D元年といわれるが、エイサーほど本気で3Dを普及させようと思っているメーカーはないのではないか」(瀬戸氏)
3Dパソコンのメーカー別市場シェアを見てみると、富士通が64.5%と市場の3分の2を獲得。同社はデスクトップPCで65.5%、ノートPCで59.5%と、3Dパソコンで先行している強みを生かし、両分野で圧倒的なシェアとなっている。次いで、NECが28.6%を獲得。富士通と合わせた2社で、市場シェアの実に90%以上を占める。これにアクティブシャッター方式を採用している東芝が6.2%と続き、それ以下は、ASUSTeK Computerの0.4%、オンキヨーの0.3%、MSIの0.1%と、いずれも1%以下のシェアとなる。東芝は、ノートPCだけで3D対応を図っており、ノートPC市場では36.7%と3分の1以上のシェアを占める。
「他社との違いは、適正価格での提供に加えて、コンテンツ、製品構成といった点にも力を注ぐ点だ」とする同社では、NVIDIAとの協業関係により「3D Vision」に標準対応する。これにより、3D Visionに対応した3Dゲームの利用のほか、3Dビデオ、3Dストリーミングの視聴が可能になる。また、イーフロンティアとの協業により、同社が開発した「Shade 3Dブラウザ」を標準搭載し、これにより、3D Visionに対応したコンテンツが利用できるようにした。ここではGoogle 3Dギャラリーで公開されている120万点の3Dコンテンツを利用できるという。さらに、AS5745DG-A54E/Lでは、2Dの動画コンテンツも擬似的に3D変換できるようにしている。
一方で、3D Vision対応の液晶ディスプレイやプロジェクタも国内に投入。3D表示を可能にする周辺機器のラインアップにも力を注ぐ。この点でも他のPCメーカーに比べて取り組みには差があるとする。強い自信を見せながら投入した新製品によって、果たしてエイサーは3Dパソコンの市場においてどこまで存在感を高めることができるのかが注目される。
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