米企業では、決算発表をプレスリリースではなく、自社のウェブサイトに掲載する傾向が強まっている。
マイクロソフトは10月27日、2011年度の第1四半期決算を翌日の28日に自社の投資家向け広報(IR)サイトに発表する旨のプレスリリースを発表し、新たな開示プロセスを明らかにした。この中で同社は、今後、四半期決算の発表をニュース配信業者経由で配信することはないが、自社のウェブサイトに掲載する財務関連のニュースは、ニュース配信業者経由でも配信するかもしれないと付け加えた。
決算発表の28日、マイクロソフトは取引所が引けた直後に自社のIRサイトに決算関連の情報を掲載。その後、カンファレンス・コール(電話会議)を開催。その模様は同社のIRサイトでライブ中継された。
この決算発表の前、マイクロソフトは投資家やアナリスト、メディアの混乱を避けるためにメディア向けのアドバイザリー・ニュースリリース(media advisory)を配信した。これは投資家向けに新たな情報をウェブサイトにアップしたことを告知するリリースである。告知情報を掲載したサイトにハイパー・リンクを用意し、情報アクセスもシンプルだ。
マイクロソフトによれば、IRサイトでの決算発表は、業績パフォーマンスのスライドや主な業務内容も掲載されており、株主やアナリスト、投資家などは関連する文書やウェブキャスティングへのアクセスも可能で、プレスリリースにはない多くの利点があるという。
マイクロソフトは、IR業界ではXBRL(各種財務報告用の情報を作成・流通・利用できるように標準化されたXMLベースの言語)の活用などで、長年にわたってリーダー的な存在だ。それだけに、今回の決断は、ちょうど半年前の4月、自社のIRサイトに2010年第1四半期の財務結果を掲載した、検索大手のグーグルを思い出させる。グーグルもそれまでの決算発表のやり方を改め、プレスリリースでの発表を行うことなく、自社のサイトに発表したのだった。
グーグルにマイクロソフトが歩調を合わせて動きだしたことで、自社サイトで決算発表を行うトレンドは、一気に広まる可能性がある。すでに、商業不動産情報大手のライスや大手ブローカーBGCパートナーズ、世界有数のオンライン旅行企業エクスぺディアも同様の決算発表を行っている。
「自社のウェブサイトでの決算開示は、投資家が企業情報を入手する大きなチャネルになり、その結果各社のウェブサイトへのアクセスも増加するだろう」(カナダのIRコンサルタント、ドミニック・ジョーンズ氏)。しかも、プレスリリースでの発信よりもコストが低く、関連する業務も合理化できる。
しかし、他方では、こうした決算発表のやり方は中小規模の企業にはメリットがないのではないか、プレスリリースの業者配信を活用するほうがまだ得策ではないのか、といった見方もある。
当分、自社IRサイトでの決算発表を開示する動きから目を離せない。
◇ライタプロフィール
米山 徹幸(よねやま てつゆき)
IRウォッチャー、埼玉学園大学教授。最近の寄稿に「IR業務のソーシャルメディアは幼年期」(宣伝会議「広報会議」10年12月号)など。
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