サイボウズが、無料コラボレーションツール「サイボウズLive」の自由登録制を10月25日に開始した。
同社社長の青野慶久氏は、「サイボウズLiveの利用者から、招待なしでも登録できるようにしてほしいという要望が多数あった」と話す。
サイボウズLiveは、2009年11月26日から11カ月間に渡り、登録を利用者からの招待によるものに限定していた。今回の自由登録制によって、サイボウズLiveを利用したい人であれば誰もが自由にサービスを利用できるようになる。招待登録時の利用者数は約4万人、約1万2000グループ。自由登録制への切り替えによって一気に利用者増を狙う。
サービス開始からこれまでの利用シーンは、企業間プロジェクトから地域医療の現場、大学などの教育機関まで多岐に渡っているという。そうしたサイボウズLiveの利用事例のいくつかは、東京秋葉原で開催された「CybozuLive Special Event 2010」で示された。
Twitterの活用が話題となっている飲食店「豚組」などを運営するグレイスの中村仁氏は、2010年9月に設立したTwitterアプリケーションの開発会社であるKiznaにおいて、サイボウズLiveを活用した事例を示した。
同社では、物理的なオフィスを持たず、しかも全員が兼業。東京、仙台、福岡といった離れた場所にいる15人以上のメンバーが参加して企業運営を進めている。
中村氏は、メーリングリスト(ML)での情報共有では、議論に途中参加しにくい、話題が広がりすぎるといった課題を指摘。「(MLは)議論には不向きであり、実際には情報が共有できていない。1カ所から多くの人に情報が発信されるこの仕組みは連絡には向いている」とする一方、「サイボウズLiveによるグループウェア活用では、1カ所に情報が集まり、議論に適している」とした。
また、医療法人鴻鵠会睦町クリニック医院長の朝比奈完氏は、在宅医療におけるチームにおいてサイボウズLiveを活用し、担当する患者に関する情報を効率的に共有できているという。メリットとしては、膨大な投資を必要とせず、比較的少人数での情報共有を一定のセキュリティを確保した状態で行える点を上げた。
同社では、自由登録制の開始とあわせ、サイボウズLiveのシステムアップデートを実施した。その狙いは「ビジネスのためのソーシャルネットワークとしての機能強化」にあるという。
「日本においてはビジネスパーソンが安心して利用可能なソーシャルネットワークサービスが存在していない。サイボウズLiveは、ビジネスコラボレーションを円滑に進めるために不可欠な、ビジネスパートナーとの信頼関係を構築するためのツールになる」(青野氏)
例えば、公開プロフィールページの作成により、サイボウズLiveにログインしていない利用者にもビジネスプロフィールを公開することが可能となった。また、マイクロブログ機能により、投稿した140文字のテキストと画像を知人と共有できるようにし、部署異動や事務所の移転、プライベートな出来事などの近況を知らせることで、ビジネスパートナーとのつながりを維持および強化できるようにした。
さらに、Twitterとの連携機能も追加されている。関係者だけで情報共有できるクローズドなコラボレーションスペースを提供するほか、Twitterでのダイレクトメッセージによる招待状送付、サイボウズLive上でのTwitterアカウント名による検索など、サイボウズLiveからTwitterを活用できる各種の機能を追加し、無料で利用できるサービスの内容をかなり広げている。
では、サイボウズLiveの収益モデルはどうなっているのだろうか。基本的なスタンスは、これまでのサイボウズがグループウェアの普及戦略で展開してきた手法と同じだ。
無料サービス(お試し版)によってまずは多くのユーザーに利用してもらうことで利便性を訴求し、その後の利用者拡大や、より高度な機能の提供によって、有料サービスへの移行を促進。これによって収益を得るというものになる。
サイボウズは、今回の自由登録制の開始に伴って無料利用の範囲を拡大し、有料プランのスタートまで無料で1グループあたり100人までの利用を可能とした。だが、2012年2月からは、20人以上の利用についてはオプション有料プランを提供。21人目以上の利用に対しては、1人追加ごとに月額100円の課金を予定している。さらに、無料で利用できる1グループの標準ディスク容量を500Mバイトに拡充。有料プランの提供開始以降も500Mバイトまでは無料で利用できるようにしたが、ディスク利用が拡大すれば、サイボウズはここでも収益を得ることができる。
だが、かつてのグループウェアの普及戦略の場合には、対抗する製品群が高価であり、サイボウズ製品との価格には大きな差があった。無料での試用、そして安価な価格設定は、それだけで強力な武器となったのだ。一方、今回のサイボウズLiveの場合、競合となるサービスは無料が当たり前。機能の差別化とともに、価格面での差をどう打ち出すかがカギになる。また、ビジネスコラボレーション分野におけるサイボウズのブランド力が試されるともいえよう。
そして、mixiやFacebookといった一般的なSNSに対して、サイボウズLiveがビジネスシーンにおける優位性を明確に打ち出せるかも注目される。その点で見逃せないのが、Twitter連携を強力に進めた点だ。Twitterをビジネスツールとして活用するための外部の枠組みとしての位置づけを示したものでもあり、大きな特徴のひとつとなり得る。また、今回のイベントで紹介されたように、すでにサイボウズLiveとTwitterを連携させてビジネス利用を推進しているユーザー事例が出始めている点も心強い。「ビジネスのためのSNS」を標ぼうするサイボウズLiveが、グループウェア市場でサイボウズOfficeが巻き起こしたようなムーブメントを再び引き起こせるかに注目したい。
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