電子書籍の現実と戦略(前編)--事業に必要な「柔軟性」と「忠実性」の調和 - (page 2)

 柔軟性と忠実性を兼ね備えたテクノロジーを活用し、その2つの要素が調和するところを探ったことが、WIREDが電子雑誌においてもっともリッチな体験を提供することにつながったのだと考えています。

デジタル版WIRED iPad専用のiOSアプリとして提供されているデジタル版WIRED※クリックで拡大画像を表示

--ところで、今回のAdobe MAX 2010では、InDesignから直接iPhoneやAndroid端末向けに書き出す機能をサポートしたと発表されていましたが、そのフォーマットについて教えてください。

Clark氏:InDesign CS5では、「.issue」(ドットイシュー)という電子ブックフォーマットをサポートしています。基本的にはパッケージファイルで、そこにはJPEGやPDF、XML形式の定義ファイルなど一式が内包されています。現在のところ「.issue」はベータ版という扱いで、製品化されるときには名称が「.folio」(ドットフォリオ)に変わる予定です。

--その.folioのフォーマットに関する詳細について、公開する予定をお持ちでしょうか?

Clark氏:これまでのAdobeのファイルフォーマットに対する取り組みには、一定のパターンが見られると思います。フォーマットの定義から間もない、進化中で変更が多く発生しそうだという段階では、最終的に製品化されたときにどのようになるか、ある程度予測して将来像を担保できなければなりません。公開するコンテンツに対し責任を負う出版社側の技術的な要望もくまなければならず、Adobeは一定のコントロールを残しておく必要があります。

 ファイルフォーマットとして進化し、安定状態に達したと判断したときには、これまでPDFやFLASHがそうであったように、.folioの仕様もオープンになると思います。

--それでは、.issueあるいは.folioでの書き出しをサポートするソフトウェアは、当面はInDesign CS5に限定されるのでしょうか?

Clark氏:ほかの製品が.issueでの書き出しをサポートする可能性はあります。サードパーティー製品の場合には、我々の提携パートナーに対してライセンスを供与する、という形になるでしょう。

 サポートを確約するという意味ではありませんが、Adobe製品の「Lightroom」というプロ向け写真管理ソフトで、.issueまたは.folio向けに写真をエクスポートする機能を追加する、といったことはあり得るでしょうね。InDesignのワークフロー自動化ツールを開発するサードパーティー、たとえばWoodWingなどと提携し、エクスポートツールを発売するということもあるかもしれません。

--なるほど。ということは、Adobeとしては現在.issueや.folioフォーマットの普及期と位置づけ、ビューアともども広く活用してもらおうと考えているわけですか?

Clark氏:そのとおりです。現在Digital Publishing Suiteのベータ版を公開中ですが、その前段階のプレベータ版を出していた半年間においても、出版社との協業を進めていました。

 Conde Nastのデジタルマガジン--月刊誌のWIREDや週刊誌のThe NewYorker--に注力していました。Conde Nastは18の雑誌を擁していますが、そのすべてについて、デジタル化にDigital Publishing Suiteを採用するという発表をすでにしています。ほかに、OmniMediaの「Martha Stewart Living」にも採用されています。

 発表済みの事例はそれほど多くありませんが、世界中の出版社から引き合いをいただいております。ソフトウェアはベータ版を10月25日に公開したばかりではあるものの、この段階で関心が高まっています。フォーマットに関してもビューアに関しても、急激に伸びていくものと期待しています。

後編に続く)

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