映画などの音声圧縮記録再生方式であるデジタル・シアター・システムズ(DTS)。韓国の家電メーカーであるサムスン電子やLGエレクトロニクスなどは欧州向けのテレビやケータイなどにDTSを採用し、標準の音声システムになっているという。ドルビーデジタルと双璧をなす音声システムとしながらも、日本ではまだ一般の認知度は低く、再生環境が整っているとは言えない。だが、今年のPC秋冬モデルを中心に、オンキヨーや富士通などDTSを採用するメーカーが日本でも増え始め、デジタル音声トラックとしての基準が変わりつつある。
今回は、日本における現状とDTSの今後の展開についてdts Japanのマーケティング・マネージャーである伊藤哲志氏とWWフィールド・アプリケーション・エンジニアリング ディレクターの藤崎賢一氏に聞いた。
まず、今後展開する予定のサラウンドシステムが「NeoX」だ。NeoXは、Blu-ray Discに収録されている7.1chサラウンドを、11.1chサラウンドにアップミックスするシステムだ。近々1台のAVアンプでの対応を予定しているが、今回は2台のAVアンプを用いての視聴となった。近々に対応のAVアンプが発売される予定という。
11.1chは、前後横センターの7つとウーファの7.1chに前方ワイド2ch、前上方2chを追加。独自アルゴリズムにより、足りない音を補間するというもの。
視聴したBlu-ray Discソフトは、古い作品であったものの、上方からの音やワイドの広がり感などは十分に堪能できる。さらに周囲を一周するような音場を構築しているCDを視聴した時は、それぞれのスピーカーから飛び飛びに音が出るような印象から、自分の周りを周回するような滑らかさを体感できた。ただ、スピーカーを11本構築するシステムは、一般家庭にはハードルが高すぎる感も拭えない。
「現時点ではハイエンドのAVユーザーに向けてのシステム。11.1chはDTSの技術力の高さの象徴です」と伊藤氏は語る。DTSが目的としている方向性はさらに別のところにあるようだ。
「DTSの収入源はAVアンプのライセンス料によるものがほとんどです。そこでインターネットでの動画配信時代の到来を踏まえ、AVアンプ以外のさまざまなデバイスに対応すべきと考えているわけです」(伊藤氏)。
つまり、DTSの認知度と技術力が認められることで、さまざまなデバイスへの対応が期待でき、ユーザーはその恩恵により高音質のソースを楽しめるようになる。
特に圧縮技術に定評のあるDTSにとっては、低いビットレートの高圧縮で高音質を求められるインターネットの動画配信はまさにうってつけの場ということだ。それにより、クラウド時代の音声技術としてのテレビやPC、ケータイなど、さまざな端末に導入されることが目的だ。
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