NTTドコモとKDDI、地上アナログ放送終了後の空き帯域における次世代マルチメディア放送方式をめぐる大手通信キャリア2社のし烈極まる争いは、9月に入ってなお決着の日を見ていない。
9月3日、総務省で開催された「207.5MHz以上222MHz以下の周波数を使用する特定基地局の開設計画に係る公開説明会」は、時間こそ90分弱でまとめたものの、実に4時間の激闘に及んだ前回の説明会に劣らぬ熱気を漂わせていた。
KDDIやクアルコムが中心となるメディアフロージャパン企画(メディアフロー)は、自社の事業説明の段階から、NTTドコモ陣営のマルチメディア放送(mmbi)について「(前回示したカバーエリアは)実際にシミュレーションしてみると大きな差分が出る」とけん制。さらに受信品質と電波伝搬関連の質問を集中させた。地上高1.5メートルにおける電波伝搬試験実施の有無や実施時期・期間、またシミュレーションと実測値の整合性などについてmmbiの回答を求めた。
これに対し、mmbiは「2009年9月より適宜、実施している」回答。シミュレーションと実測値の整合性についても「大きな差分はない」と説明した。また、メディアフロー側が独自に実施したとするデータと自社のデータが異なる結果を示していることについて「われわれは東京タワーの倍以上の高さを持つ東京スカイツリーを利用する。スカイツリーを使えばビル陰障害の発生は最低限に防げる」と反論した。
「東京タワーでもスカイツリーでも、高い建築物との距離によってビル陰障害は少なからず発生する」と主張するメディアフローは、最終的に「第三者機関による測定」を要求。これについて説明会終了後、NTTドコモ代表取締役副社長の辻村清行氏が「すでに多くの時間を費やしている。これ以上時間をかけることなく、速やかな決定を望む」と要望を受け入れない考えを示していた。
一方、mmbiも前回同様「サービスの事業性」についての質問を集中させた。メディアフローが掲げる開始後5年の普及値とする5287万台のうち、au端末が1586万台と見込んでいることに触れ「(ドコモ、ソフトバンクモバイルが現状、機能不搭載を表明しているため)根拠のない数値」と一刀両断。この見込み数値の違いが、コンテンツを提供する委託放送事業者などにも影響するのではないかと指摘した。
メディアフローの代表取締役社長である増田和彦氏は「スマートフォンやiPadなど多様な携帯通信端末が登場する中で、通信事業者の支配がどれくらい及ぶのか疑問」とした上で、「携帯電話事業のシェア50%を持つNTTドコモが、技術方式選択の審査段階において『自社の推す方式と競合する方式になれば対応しない』との方針を示すことは公正な競争上問題があるのでは」とやり返した。
また、メディアフロー支持から一転、mmbi支持に乗り換えた過去があるソフトバンクモバイルについては「絶対支持しないということではない、と認識している」(増田氏)と回答。そのNTTドコモについても「未来永劫対応しないというわけではないと思っている」(増田氏)とした。これについてはNTTドコモの辻村氏も「確かな事業性が認められれば」と説明会後の囲み取材でコメント。その展開に含みを持たせた。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス