マイクロソフトとARMのライセンス契約--その狙いはいかに

文:Mary Jo Foley(Special to ZDNet.com) 翻訳校正:末岡洋子2010年07月27日 15時31分

 MicrosoftとARMは米国時間7月23日、既存の提携を拡大し、ARMアーキテクチャのライセンス契約を結んだことを発表した。

 2社はこの契約についての詳細情報を公開していない。だが、MicrosoftとPCパートナー各社がWindowsと/または「Windows Phone OS」をARMベースのスレートやタブレットで利用できるようにするのではないかと予想してしまう。

 MicrosoftとARMは1997年に提携しており、「Windows Embedded」と(「Windows Embedded Compact」ベースの)Windows Phone OSがARMプロセッサで動くことになっている、最新のライセンス契約はこれを拡大するものとなるが、拡大の方向性については情報は公開されていない。

 ARMのプレスリリースでMicrosoftのゼネラルマネージャーのKD Hallman氏は、「ARM技術により近くアクセスできるようになることで、ARMベースの製品向けの研究開発の取り組みを強化できる」とコメントしている。

 では、MicrosoftがARM周りで進めている新しい「研究開発」とは何なのか?わたしの予想--純粋な予想にすぎないことを強調しておく--は、Windows OSをARMにポーティングすることに関係あるのではないか、というものだ。Windows EmbeddedはARM上で動くが、これまでのところフルのWindows OSはARMでは利用できない(Microsoftが“Longhorn”こと「Windows Vista」をARMにポーティングしており、社内でこのプロジェクトは“LongARM”といわれている、といううわさがあったが、Microsoftは何も公開しなかった)。

 うわさでは、Microsoftは引き続きWindowsをARMにポーティングすることを探求しているといわれている。以前このブログで、「Menlo」という開発コード名を持つ研究プロジェクトを紹介したことがある。わたしの情報筋によると、MenloはWindows Embedded CompactをWindows(NT)カーネルに置き換えることで、Windowsをモバイル端末で動かせるようにするプロジェクトという(情報筋によると、研究者はMenloを補完するために「Experiment 19」というグラフィックプラットフォームを構築しているとのことだ)。MicrosoftはMenloについてコメントを控えているが、Microsoft Researchのウェブサイトをはじめ、他のウェブサイトでもMenloプロジェクトに関する言及がみられる。

 別の可能性もある。ARMとの新しい契約は、ARMチップを搭載したタブレット、スレート、ネットブックでWindows Phone OSを動かすためのものだったとしたらどうだろうか?(ZDNetのブロガー仲間、Jason Perlow氏が以前「ZuneBook」というアイデアについて書いている。)Microsoftは、PCメーカー各社がWindows Phone OS(「Windows Mobile」と「Windows Phone OS 7」)をベースとしたスレートやタブレットを作成するのに前向きではない。その代わり、“Windowsスレート”のOSとして、「Windows 7」またはWindows Embedded Compactを使うことを奨励している。

 Microsoftが前向きな姿勢を示していないにも関わらず、いくつかのOEMがWindows MobileベースのMID(モバイルインターネット端末)に取り組んでいるし、Microsoftも数年前から、Windows MobileをMID向けにポーティングすることを探っている。この取り組みを率いているのは、Microsoftの著名な開発者で最高ソフトウェアアーキテクトのRay Ozzie氏の同僚であるLen Kawell氏だ。

 つい先日、Microsoftがスレート/タブレット戦略について口を閉ざしているため、結局「iPad」を購入したことについて書いた。Windows Phone 7ベースのスレートがあるのなら、Microsoftはすぐにでもリークすべきだ。

アップデート:Microsoftが結んだライセンス契約の種類は、アーキテクチャライセンスだ。ARMの戦略マーケティング担当ディレクターのKerry McGuire氏によると、この種類のライセンスを自社と結んでいる企業は3社あるという。3社とはQualcomm、Marvell Semiconductor、Infineon Technologiesで、Microsoftはこの種類のライセンス契約を結んだ最初の大手ソフトウェアベンダーになるとのことだ。

 これは、Microsoftがチップ開発に着手することを意味するのか?必ずしもそうではないだろう。「アーキテクチャライセンスにより、ARMアーキテクチャとプロセッサ実装に初期段階からアクセスできる」とMcGuire氏は述べている。ライセンスは、ARMの機能とアーキテクチャを完全に理解するのにも役立つのだ。

 (Microsoftは打ち切りとなった携帯電話「Kin」で、リファレンスアーキテクチャを構築していた。スマートフォン、タブレット/スレート、または/それにPCプラットフォームに向けてARMで同じようなことをするのかもしれない)

 Microsoftが何らかの製品向けに自社でチップまたはマイクロアーキテクチャを作ったことがあるのか、Microsoftに聞いてみた。代表者は、「Microsoftは、自社製品向けに自社チップもマイクロアーキテクチャも製造していない」と回答した。

 アップデート2:The Registerはこの契約について、「Xbox」でARMを利用するためではないかと推測している。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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