セールスフォース・ドットコムの提供する「Salesforce Chatter」が、6月22日の提供開始からわずか1週間で、利用企業が1万社を突破したという。
同社が「業界初のクラウド型エンタープライズ・ソーシャルコラボレーション・アプリケーション」と銘打つChatterは、リリース前から多くの関心が集まっていたプロダクトだ。
米Salesforce.comの会長兼CEOであるMarc Benioff氏も、「過去にこれほどの盛り上がりを見せた製品リリースは記憶にない。Chatterの普及のスピードは、まさに驚きのひと言」とのコメントを寄せているほど。1週間で1万社以上という数字は、社外だけでなく、社内にとっても大きなインパクトとなっているようだ。
Chatterの最大の特徴は、ソーシャルネットワークの手法を、ビジネスシーンに持ち込んだことだ。Facebook、Google、Twitterなどで広く普及したプロファイルやステータス更新、リアルタイムフィードといった機能を活用することで、ソーシャル性、モバイル性、リアルタイム性を兼ね備えたビジネスツールとして利用できるようにしている。
セールスフォース・ドットコム日本法人の社長である宇陀栄次氏は、「経営者にとって最大の課題は、いくら情報システムに投資しても、欲しい情報がリアルタイムに入らないという点だった。Chatterは、これを改善するツールになる」と、その意義を位置づける。
宇陀氏はChatterを、「人間の神経系統」に例える。
「靴の中のつま先部分に小さな石が入っていると、人間は“何か当たっているな”ということがわかる。これは末端まで神経系統が張り巡らされ、それがリアルタイムで信号を発信して、脳に伝達するから。脳が、つま先の神経系統にわざわざ聞きにいって“小石が入っていませんか?”なんて聞かない。これまでの情報システムは、例えるならば後者でしかなかった。だが、Chatterでは、人間の神経系統のように、欲しい情報がリアルタイムで発信され、必要な時に手に入るようになる」(宇陀氏)
Chatterでは、従来のような、ポータルサイトに情報を集めておき、そこに見に行って情報を共有するという手法や、あるいは複数ユーザーによるドキュメントの共同作成、グループウェアによる情報共有手法とは大きく異なったアプローチをとる。ソーシャルコラボレーションの仕組みを取り入れることにより、社員同士やプロジェクトチームのメンバー同士、社外を含んだチームメンバーが、お互いのビジネスプロセス、アプリケーションのデータなどをフォローし、情報が更新された場合には、リアルタイムでそれを共有できるようになる。
この仕組みの効果として、セールスフォース・ドットコムの社内でもこんな事例があるという。
ある役員が顧客のもとに出向いた際、受けた質問に即答できなかったことがあったという。そこで、Chatterを利用して、手元のiPhoneからその製品に関連するチームに向けて質問を書き込んだところ、わずか数分で複数の社員から書き込みがあり、その場で即座に回答できたというのだ。回答するのに最適な人を、こちらから探すことなく、回答がプッシュ型で配信されてくるというわけだ。
「自分が知っておきたい商談、進捗を確認しておきたいプロジェクトなどは、その動きをChatterでフォローしておけば、リアルタイムで動きが把握できる。なぜ、その商談の話を、私にメールしてくれないんだとか、なぜ情報を寄越さないんだという問題が起こらない」(宇陀氏)
経営トップと現場との情報共有に壁がなくなるというメリットもあり、あるプロジェクトに対して、経営トップが直接コメントを入れるといった動きも出ている。また、関係すると思われる人にメールを送信しておくといった作業も不要になり、メールそのものが削減されるという成果もある。実は、CEOのBenioff氏自身、Chatter導入後にはメールの数が40%も削減されたという。
同社では、これを「Cloud 2」と表現し、クラウドの新たな世界が訪れたと説明している。Cloud 2の世界は、セールスフォース・ドットコム自身が定義しているように、「ソーシャル性」「モバイル性」「リアルタイム性」を兼ね備えたものになる。しかし、これを本当の意味で実現できるフロントエンド側のデバイスは、まだ一部のスマートフォンやiPadなどに限定されているのが現状だ。Cloud 2時代に最適化された、先述の3つの要素を兼ね備えるモバイルツールの拡充が待たれるところだろう。
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