プロジェクトは3年という長期にわたるものだったが、桐井氏は同社グループの着目すべき点として「グローバルで統一すべき部分とローカルで残すべき部分を分けた」ことにあると説明する。生産や購買、財務レポートなどはビジネスプロセスも含めてグローバルで統一しているが、そのほかの部分で拠点ごとに立てられた良策は、ローカルルールとして残したとしている。
そうしたグローバルシングルインスタンスで統一したサムスン電子は、マスタデータの整備コストを50%削減し、レガシーシステムのインターフェース部分を50%削減することに成功したという。「グローバルシングルインスタンスという形態を取ることで、ITガバナンスの中央集権化にも成功している」(桐井氏)という。
グローバルシングルインスタンスの形態でERPを稼働させているサムスン電子の場合、IFRS対応でも1カ所のシステムを修正するだけですんでいる。サムスン電子の事例について桐井氏は、グローバルシングルインスタンスのメリットのひとつとして“リアルタイム性”を挙げている。財務レポートのプロセスも標準化されていることで、常に世界のどの拠点からもビジネスがどのように動いているかリアルタイムで把握できるからだ。「財務レポートの“速報版”が存在せずに、すべてがリアルタイムで分かる」(桐井氏)というのもグローバルシングルインスタンスの強みでもあるようだ。
ERPのグローバルシングルインスタンスの流れの延長線上にあるのが、グループ各社の財務経理の業務を1社に集約する「財務経理のシェアードサービス化」だ。しかし桐井氏は、「財務や経理の業務が標準化されていない」ため、「日本ではあまり普及していない」と説明する。本来、財務や経理といったバックオフィス業務はシェアードサービス化で集約できるはずなのだが、日本企業の場合、標準化されずにグループ各社で個別に行われているのが実情だ。桐井氏は、そうした観点からもERPのグローバルシングルインスタンスのメリットを強調している。
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