NECとNICT、ハードウェア処理で高速化した量子暗号鍵抽出システムを開発

ZDNet Japan Staff2010年04月16日 15時21分

 NECと独立行政法人情報通信研究機構(NICT)は4月16日、暗号通信技術である量子暗号技術において、従来課題となっていた暗号鍵抽出の高速化をハードウェア処理により実現したシステムを開発したと発表した。両者によると、このようなシステムが開発されたのは世界初で、暗号鍵の抽出速度を従来のソフトウェアでの処理に比べ100倍以上高速化できるという。

 暗号鍵の抽出処理が必須となる量子暗号通では、安全性を確保するために大量の計算処理が必要となるが、従来のソフトウェア処理では計算速度が足りず、厳密な安全性の確保と量子暗号通信の高速化を両立させることが困難だったという。

 新しい高速暗号鍵抽出システムの特長は、暗号鍵の秘匿に必要な行列の演算処理を高速化し、高速で効率的な「誤り訂正」を実現したことだ。

 暗号鍵の秘匿性を確保するための大規模行列演算では、数百キロビットサイズでの行列演算が必要となる。この演算速度を実現するために、ハードウェア実装に適した行列構成を採用し、パイプライン処理を最適化した。また、暗号鍵中に存在する誤りを訂正する「誤り訂正処理」においては、最大1Mビットの符号長まで対応し、最大9%の誤り率まで訂正可能なLDPC符号をハードウェアで実装した。

 今回開発した高速暗号鍵抽出技術は、2006年よりNECが参画している情報通信研究機構の「量子暗号の実用化のための研究開発」の一環として進めてきた研究成果だ。NECでは、今回の開発が超高秘匿通信ネットワークの実現に大きく貢献できると考えており、今後も研究開発を進めるとしている。またNICTは、この高速鍵抽出技術が量子暗号技術の標準技術となるよう先導的役割を果たし、日本発の技術が世界標準として認知されるよう努力するとしている。

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