ネットとラジオは似た文化--ニコニコ動画「ニコラジ」が生まれた理由

永井美智子(編集部)2010年04月16日 08時00分
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 インターネット上のラジオサービスに再び熱い注目が集まっている。IPサイマルラジオ協議会が3月15日に開始したラジオ配信サービス「radiko」はサービス開始から1週間で総ストリーム数が523万件、アクセス数が約4710万PVに達し、ユーザーが独自に開発した関連サービスも多数登場した。

 また、コミュニティFMラジオが聞けるiPhoneアプリ「コミュニティFM for iPhone」なども登場している。

 この流れに合わせるかのように、4月5日、ニコニコ動画でもラジオ番組「ニコラジ」が始まった。ニコニコ動画は、映像とその上に流れるコメントを使ってコミュニケーションを楽しむサービスだが、ニコラジは音声が主役。画面は基本的に何も映らず、黒いままだ。

ニコラジは「退化の進化」

 ニコラジは、毎週月曜日〜金曜日の22時からニコニコ生放送で流れている1時間番組。月曜日〜木曜日はDJでナレーターのやまだひさし氏がパーソナリティーを務める。やまだ氏はTOKYO FM/JFN系列全国38局ネット「ラジアンリミテッドDX」のメインパーソナリティーを務めたことなどで知られ、「ニコニコ動画や生放送に未来を感じて、参加してくれた」(番組の企画、制作を担当するCELLの代表取締役会長、横澤大輔氏)という。

CELLの代表取締役会長、横澤大輔氏 CELLの代表取締役会長、横澤大輔氏

 横澤氏はニコラジを「(ニコニコ動画の)退化の進化」と表現する。映像をなくすことは“退化”のように見えるが、実は新たな“進化”の形だというのだ。

 ニコラジの構想期間は実に6年。ニコニコ動画の前身にあたる携帯電話向けストリーミングラジオサービス「パケラジ」のころから温めていたアイデアだった。

 「ネットとラジオは相性が良い。もともとラジオは双方向なメディアで、電話やFAX、はがきやEメールを使いながら、リスナーと一緒に番組を作っていた。また、テレビと違ってタレントが本音を“ぶっちゃけ”られる場所。つまり、ネットの文化に近い。そこにコメントというものを組み合わせれば、かなり革命的になるのではないかと思った」

 実際、ニコラジの反響は上々という。初日の視聴者数は約2万2000人、ついたコメント数は約9万8000件となり、同時期にリニューアルした生放送番組「とりあえず生中(三杯目)」よりも多かった。

  • 「ニコラジ」。黒画面のままラジオ番組が流れ、ユーザーがコメントを書き込む

  • ときどきFooさんの書いた文字やイラストなどが映る

 また、新たな発見もあったという。例えば、「背景が黒だと、流れるコメントが読みやすい(笑)」。また、あえて映像を流さないことで、視聴者が音声やコメントを書くことに集中できるようになったという。「(機能を)捨てることを覚えた」

 視聴者を飽きさせないように、ときどき「Fooさん」というキャラクターが書いた文字やイラストを映し出したり、音楽をかけるときにプロモーションビデオを流すなどの工夫はしている。「黒い画面に突然映像が出てきたときの貴重感は大きい。また、ラジオなのにプロモーションビデオが見られる、という感覚は新鮮」

ユーザーが参加しやすい番組づくりを

 このほか、通常の生放送では呼びにくいようなゲストを登場させられる点もメリットだという。たとえばニコニコ動画で人気のある動画投稿者でも、一般の人のため顔出しを嫌がる場合は少なくない。しかしラジオであれば声のみの出演のため、気軽に出演できるというのだ。さらに出演者にとっても、トークのみに集中すればよいため、表情や服装、仕草などにまで気を配らねばならない映像出演よりも負担が少ないと横澤氏は予想する。

 「(いきなり映像出演するよりも)まずはラジオで慣れてもらった方がいいのかもしれないと思う。ユーザー生放送をしている人も多いので、『こうやれば番組が盛り上がる』というようなコツなど、盗めるところがあればニコラジから盗んでもらって、もっとユーザー生放送も盛り上げてもらえれば」

 現在は毎週木曜日に、女性のような歌声で人気のニコニコ動画ユーザー「百花繚乱」さんをアシスタントとして迎えている。「将来は人気の出た一般ユーザーのアシスタントが冠番組を持つこともあるだろう」と横澤氏は期待を寄せる。

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