単なるスケジュール共有だけでは生き残れない――。サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏が危機感を募らせている。サイボウズは3月18日、中堅中小企業(SMB)向けグループウェア製品群の統合ソリューション戦略に関する説明会を開いた。
サイボウズは現在、SMB向けグループウェア「サイボウズ Office」や、ウェブデータベース「サイボウズ デヂエ」、業務アプリケーション「かんたんSaaS」などを提供している。ある調査では、サイボウズ Officeの国内導入シェアは3年連続で1位を、顧客満足度も9回連続で1位をそれぞれ獲得している。
しかし、青野氏はサイボウズ Officeの使われ方に不満を感じているようだ。同氏によると、サイボウズの社内では電子メールを使わずに、(サイボウズ Officeの)社内メールを使って社員同士がやり取りしているという。同社が実施したアンケートでは、サイボウズ Officeのスケジュール機能は95%以上のユーザーが利用しているものの、社内メール機能は約60%と低い。
また、サイボウズ Officeの導入社数は2万7000社にのぼる。一方、サイボウズ デヂエの導入社数は5000社程度にとどまっているという。「デヂエも社内メール同様に、社内では必須のツールになっている」(青野氏)としているが、実際には「デヂエは10年近く売っているが、サイボウズ Officeの5分の1以下しか売れていない。中小企業の役に立とうとしているのにまったく使われていない」と、青野氏は訴える。
このような現状を踏まえ同氏は、「サイボウズではソフトをPCから利用してもらうことを前提にしていた。携帯電話からも利用できるが、画面の小ささや操作性には限界がある」と問題を提起。さらに、「使い慣れていないソフトを社員に使わせるのが大変」「サイボウズはスケジュール共有だけではないのか」といったユーザー企業の声に対して、自社のアピール不足を指摘した。
これらの打開策として、サイボウズでは今回、「“場所を問わず”“用途を問わず”“人を問わず”」(青野氏)使える統合ソリューションを提供するに至った。
サイボウズが提供する統合ソリューションは、サイボウズ Officeを中心に、スマートフォン向け同期アプリケーション「サイボウズモバイルKUNAI」、かんたんSaaS、無料で利用できるグループウェア「サイボウズLive」を連携させたものだ。
かんたんSaaSはサイボウズ デヂエをプラットフォームに採用しており、専門業者が作成したアプリをSaaS形式で提供する。特定の業種に特化した専門業者が作ったアプリは、多様化するユーザーのニーズに応じた事細かなラインアップを用意しているという。
サイボウズLiveは、仕事とプライベートの予定を共有するグループウェア。現在、招待制を採用しており、20人以下なら無料で利用できる。「社内だけで閉じていたスケジュール管理の用途をプライベートにも広げるため、無料で提供している」と、サイボウズSMB戦略部部長の野水克也氏は説明する。
さらに同社は2010年夏をめどに、サイボウズ Officeの新バージョン「サイボウズ Office 8.1」を発表する予定だ。8.1では、サイボウズモバイルKUNAIがサイボウズ Officeで利用できるようになる。
具体的には、場所を問わずスケジュールや社内メール、電子メールを閲覧できるほか、ワークフローの承認などが行えるようになる。対応機種については、現在のWindows phoneのほかに、BlackBerryやiPhoneに対応したバージョンを用意する予定。その後、Android Phone向けにも提供するとしている。
こうした連携でサイボウズ Officeを中心にして、どこでも誰でも使える統合ソリューションを提供する。
野水氏は、「サイボウズ Officeとサイボウズ デヂエを単に便利に使えるホワイトボードやスケジューラーとして終わらせるつもりはない。個々の職種に合わせたデータをすべてつなぐことで、エンドユーザーの仕事がもっと早く終わるように、そしてもっと便利に使えるように取り組んで行きたい」と意気込みを語った。
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