スクープ求む--NHKの動画投稿サービス「特ダネ投稿DO画」

 NHKが総合テレビにおいて、視聴者からの投稿を中心に様々な短尺動画を紹介する10分間のミニ番組「特ダネ投稿DO画」を木曜深夜に放送している。NHKが掲げる「3-Screens」戦略(※編集部注:テレビ、PC、モバイルサイトを活用し、あらゆる人にコンテンツを届けるという構想)の一環で、専用の動画投稿サイトも運営しており、総務省所管の社団法人デジタルメディアコンテンツ協会(AMD)の「デジタルコンテンツオブザイヤー」にも選ばれた。

 「一般視聴者が撮影した映像をテレビで紹介するという番組コンセプト自体は、家庭用ビデオカメラが普及した時代から存在していた。ただ現在は、デジカメや携帯電話の動画撮影機能を常に持ち歩きながら生活する視聴者が圧倒的に増大した」と番組チーフプロデューサーを務めるNHKグローバルメディアサービスの茂田喜郎氏は語る。「そこに共有や、動画を通じたコミュニケーションの機会を提供するのが番組の目的だ」(茂田氏)

  • 特ダネ投稿DO画

    提供:NHK

 番組を成功させるためには、積極的な視聴者の参加が欠かせない。そのために必要な条件として、編成局デジタルサービス部副部長の倉又俊夫氏は「番組をレギュラー化させること」「(サイトが)YouTubeやニコニコ動画に劣る、という印象を持たれないこと」の2点を挙げる。

 ただ、投稿サイトでは著作権の問題や、公序良俗に反するようなものが寄せられるケースもある。NHKが運営するサイトで、問題のある動画を公開するわけにはいかない。

 「一般の動画投稿サイトのように、一度掲載したものをクレームなどに応じて取り下げる、ということはできない。あくまで事前に審査し、それを通過したものだけをアップロードするというのが基本だ。多いときで1日100本近くの動画が送られてくることもあるが、それらを制作責任者などが逐一チェックする作業が欠かせない」(倉又氏)。幸いにも、今のところ著しく公序良俗に反する映像はさほど送られてこないとのこと。

 また、基本的な投稿テーマを、「スクープ映像系」と「動物系」の2点に絞っていることも特徴だ。ほかの投稿サイトと同じように自作のCGや歌、ダンスの映像などが送られてくることもあるそうだが、「(寄せられた映像作品を紹介する)デジタル・スタジアムなど他のNHKの投稿番組で対応している面もあるので、特ダネ投稿DO画では2つのテーマに絞って考えている」(倉又氏)という。

  • 水道管が破裂した様子を伝えた動画

    提供:NHK

 時には本格的なスクープ映像が届けられることもある。「川崎市で起きた水道管破裂事故では、ほぼ破裂する瞬間に近い映像が送られてきた。場合によっては報道番組に使わせていただくことも考えているため、貴重な映像を待っている」(茂田氏)。なお、投稿受付の段階で2次利用に関する許諾を得ているが、ニュースなどで利用する際には投稿者本人に一報を入れているという。「(他番組も含めて)放送で紹介する、ということが投稿するモチベーションにつながれば」と倉又氏は期待を寄せる。

 ただ、いわゆる「一億総カメラマン化」に対する懸念はあるという。「救急搬送用ヘリコプターの着陸映像などは、撮影者からするとスクープにあたる映像であっても、患者側の立場からすれば不謹慎、ということになる。紹介の是非はNHK側で判断することになるが、視聴者の方がスクープ映像を追い求める姿勢を助長することには批判的な声もある」(倉又氏)

 番組の目的は、あくまでも「動画投稿を通じた新たな楽しみの発見」。マイナスな側面があることを意識しつつも、全体的にはメディアにとってプラスになることを期待して番組を続けていくことが大事と倉又氏は話した。

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