KDDIは11月12日、開発途上国における情報通信事業に参入すると発表した。バングラデシュのNGO系ISPであるBRAC BC Mail Networks(bracNet)に約8億円出資し、50%の株式を取得する。
bracNetはバングラデシュ最大のISPで、バックボーンに固定WiMAXを使っている点が特徴。国内65州中53州にネットワークを引き、日本のインターネットカフェのような施設「e-hut」を110店舗運営している。
bracNetは投資会社デフタ・パートナーズが設立した事業持株会社gNet DEFTA Development Holdingが約60%、NGO団体のBRACが約40%出資しており、収益の一部をBRACの活動に充て、教育や医療などの公共事業につなげている点が大きな特徴だ。BRACは世界最大のNGOで、従業員11万人、年間予算は530億円。デフタ・パートナーズは1984年に米国カリフォルニア州で設立され、これまでTCP/IPを初めて商用化したThe Wollongong Groupや世界で最初のISP企業であるUUNET、Borlandなどに投資している。
bracNetは2008年の業績は売上高が2億3000万円、EBITDA(税引き前利益に特別損益や支払利息、減価償却費を加えたもの)は4900万円の赤字。ただし2009年中にEBITDAベースで黒字化しており、2009年の業績は売上高3億8000万円、EBITDAは4200万円の黒字になる見通しという。「2010年にはさらに3倍程度伸びるだろう」(KDDI取締役執行役員常務の田中孝司氏)
KDDIはbracNetの第三者割当増資に応じることで、株式の50%を取得する。これにより、bracNetの株主構成はKDDIが50%、gNet DEFTAが29.9997%、BRACは19.9998%になるという。KDDIはbracNetに4名を取締役として派遣する。
KDDIはbracNetに出資する理由について、バングラデシュの人口が約1億6000万人という世界第7位の人口大国でありながら、インターネットの普及率が2%と低く、今後大きな成長が見込まれる点を挙げている。また、田中氏によると、外資規制が少ない点も魅力であるという。
デフタ・パートナーズ会長の原丈人氏は、bracNetがEBITDAベースで黒字化したことから、さらなる事業拡大のため国際的な通信事業者の出資を受け入れることを決めたと話す。情報通信事業における技術力や経験を持ち、bracNetの公益事業性に理解を示した企業として、KDDIをパートナーに選んだとのことだ。
今後、KDDIとデフタ・パートナーズは、開発途上国の通信インフラ事業や通信サービスに対して、共同で投資や技術・事業ビジネスモデルの提供などをしていくという。田中氏は「世界的に見ると携帯電話の市場はほぼプレーヤーが決まってしまっている。しかしインターネットの分野は(特に途上国では)まったく新しい市場だ」と話し、WiMAXのような無線通信技術を活用しながら、中長期的に開発途上国での事業を進めていきたいとした。
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