独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が開催した「平成21年度情報通信ベンチャービジネスプラン発表会」で特別賞を受賞したサービス「mixPaper」。
mixPaperは、ウェブサイト上に画像ファイルをアップロードをするだけで電子ブックを作成し、共有できるサービスだ。作成した電子ブックはFlash形式で公開されるので、サイト上で閲覧したり、Javascriptのタグを使ってブログやウェブサイトに貼り付けたりできる。
電子ブックの閲覧および50Mバイトまでのアップロードは無料。有料プランを利用すれば、容量は最大1Gバイトまで利用可能で、PDFやSWFファイルのアップロードにも対応する。また、電子ブック閲覧時のオープニングアニメやバナー広告を自由に変更する機能やDRMによるコンテンツ保護機能なども利用できる。
サービスの開始は2009年4月。個人による電子ブックのアップロードに加えて、漫画販売サイトの試し読みサービスや企業サイトでの会社案内の配信など、法人のニーズも高まっているという。
このサービスを運営するのは新潟県に本社を構えるベンチャー企業ファンタジスタ。同社の代表取締役社長である栗原弘樹氏は、同県にある新潟コンピューター専門学校の教員として14年勤めた後にファンタジスタを設立した。
「スキルの高い生徒はいるが、地方ではそのスキルを生かせる職場が少ない。専門学校は専門職の技術を学ぶのに、仕事がないからと学んだ技術とは関係のない仕事をしているケースが多い。彼らのために自分たちで何かできないかと考えていた」――そんな思いから栗原氏は、同専門学校を傘下に持ち、アルビレックス新潟の取締役会長も務める地元の起業家、池田弘氏に相談。同氏の出資を受けて2005年に起業した。
当初は、専門学校時代の元生徒らをクリエーターとして迎え入れ、CGやデジタルコンテンツの受託開発を行っていた。CG制作の大手である白組からの受託を契機に、口コミを通じて仕事は増える一方、受託事業だけでの成長に限界を感じるようになったという。
そこで自社サービスを企画し、2007年にマンガをアップロードできるソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「マンガ読もっ!」を公開。結果として収益につながらなかったが、「マンガを閲覧するビューワーの評価は高く、法人からの問い合わせが増えてきた」(同社メディア事業部部長の高野寛嗣氏)ことから、ビューワーの共同開発元であるピーアンドエムとともに、mixPaperを提供するに至った。
現在、有料版を利用している企業は20社程度。その多くが会社案内やカタログ、ユーザー向けの冊子などに利用している。「アルビレックス新潟の後援会では、会報誌に同サービスを利用しているが、製本や郵送費を含めて約3000万円のコスト削減に至った。今春には電子ブックのカテゴリ分けもしていくので、ニッチなカタログなどがコーポレートサイト以外で閲覧できる場になってもいい」(高野氏)
また、個人ユーザー向けの機能強化も進める。課金の仕組みを導入して、作家個人が同サイトにて電子ブックを直接販売できるようにする予定だ。さらに、マルチプラットフォーム化も検討しており、2月3日にはiPhoneに対応したサイト「mixPaper for iPhone(URLはPC版と同じ)」も公開している。
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