東京株式市場が米国株の急落を受けて調整局面に入る中、日立製作所の頑強な値動きが市場関係者の注目を集めている。東京市場が全面安となり、日経平均株価が227円安となった1月22日、日立製作所株は逆行して7円高の316円。同じく米国株安と為替の円高進行を嫌気されて日経平均株価が続落した1月25日も日立製作所株は6円高と続伸した。2009年12月に230円台で停滞していた株価は、1カ月程度で320円台まで駆け上がっている。
日立製作所は総合電機のトップで、言わずと知れた日本を代表する企業。東京株式市場でも中枢を担う存在で、全般相場の動向の影響を受けやすい性質を持つ。それだけに、足元の全般相場と逆行した動きは特異とも言える。
足元の株価の強さの背景にあるものは、業績回復への期待だ。2010年3月期業績は連結売上高8兆7000億円(前期比13.0%減)、営業利益は800億円(同37.0%減)を計画する。一方で経常損益は2898億円から900億円へ赤字幅が縮小。最終損益も7823億円から2300億円への縮小が計画されている。国内景気の回復や構造改革の成果により、今期の業績計画上ぶれと、来期の回復期待が高まってきている。
日立製作所は2009年11月、巨額のファイナンスを発表した。公募増資と転換社債の発行によるもので、4000億円を超える資金を調達する計画を示した。発表後の株価下落で調達額は目減りしたものの、懸念材料の1つであった財務体質のぜい弱性は改善されている。ハードディスクドライブや薄型テレビ、自動車機器事業など不採算事業で構造改革を実施したことで、収益性の改善が期待される状況にもなってきている。
年明け以降の株価上昇の直接的な背景には、アナリスト評価の高まりがある。1月18日に野村証券が投資判断を「2(中立)」から「1(買い)」に引き上げ。また、大和証券キャピタル・マーケッツでも1月21日付で投資判断を「3(中立)」から「1(買い)」へ2段階引き上げ、目標株価を450円に設定している。野村証券では財務ぜい弱性の改善と不採算事業の構造改革のほか、新興国市場や環境・新エネルギーといった成長著しいマーケットでの積極的な取り組みを評価。大和証券でもこれらの実態改善に加え、ファイナンス実施の発表などにより当面の悪材料が出尽くしていると指摘する。
不採算事業の改善と景気回復による効果、経費削減により、会社側の掲げる2010年3月期業績計画は上ぶれる可能性が高いとみられる。株価が足元で急速な戻り相場を演じているが、ソニーやパナソニック、キヤノンなどほかの主力銘柄の多くが2009年来高値近辺で推移することに対し、日立製作所は1年前に付けた高値407円になお、80円以上、約20%の距離を残しており、相対的な出遅れ感も意識されている。東京株式市場全般の上値が重くなってきた現状、それをものともしない頑強な値動きを続ける日立製作所株には「強いものに付く」という投資行動の対象として魅力が増しているようだ。
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