Microsoftの研究部門による最新プロジェクトは、いってみれば、あらゆる人物の「Wikipedia」項目を作成する試みだ。
「EntityCube」という名称で、現在試用版が公開されているこの研究プロジェクトは、ウェブ上で見つかるあらゆる人物の経歴情報を集約するサービスだ。
EntityCubeは、他の既存の人物検索プロジェクトといくつかの点で類似しており、ユーザーが調べたいあらゆる人物の関連情報をウェブから集めてくる。興味深い機能としては、EntityCubeが構築するソーシャルグラフや、同名の複数人物に関する情報を、自動で人物ごとに選り分ける機能などがある。中でも特筆すべきは、ソーシャルグラフの「Guanxi Map」(guanxiは中国語で関係、人脈のこと)だが、この機能は特に動作が遅いようだ。
検索エンジンを使えば、ほぼどんな人物に関する情報も探し出すことができるが、通常は多くの異なるサイトにアクセスして手動で探さなければならない。Microsoftの研究者によれば、EntityCubeの狙いは、そうした情報をすべて1つにまとめることだという。
Microsoftが同プロジェクトを説明したページには、次のような記述がある。「検索エンジンがあるエンティティ(存在)に関連するウェブページをすべて探し出すことができたとしても、ユーザーがそのエンティティのことを十分に把握するには、すべてのページをふるいにかける必要がある。EntityCubeはエンティティ検索であるとともに、数十億ものウェブページをクロールして、そこからウェブ上のエンティティの概要情報を効率的に生成する要約システムでもある」
Microsoftは人物でなくエンティティと表現しているが、公開版のEntityCubeサイトは今のところ主に人物に注力しているようだ。EntityCubeサイトは、2009年11月30日の週の後半に公開となった。
同プロジェクトはMicrosoftの研究部門が手がけているものだが、同社の「Bing」の方向性と大いに関連しているように思われる。Microsoftは米国時間12月2日、「エンティティカード」と称する取り組みを発表した。これは、Bingで著名人の名前などの一部キーワードを用いて検索すると、検索結果の上部に、自動生成による概要情報を表示するという機能だ。
Microsoftにとって、EntityCubeのようなサービスは、こうした概要情報の提供を、現在同社がカバーしているミュージシャンなどの著名人以外にも対象を拡げて実施可能にするものかもしれない。
たとえWikipediaに項目が作成されている人物でも、最小限の記述しかない「スタブ」(書きかけ)項目だということもある。実際、Microsoft Researchを率いるRick Rashid氏の場合がそうだ。EntityCubeで検索すると、Rashid氏に関するはるかに詳細な情報が得られる。
Microsoftは、2009年2月に開催された同社の社内向け年次サイエンスイベント「TechFest」において、EntityCubeの初期バージョンを披露していた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ
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