iPhoneが日本に上陸した2008年7月にApp Storeで提供されたハドソンのiPhone/iPod touch向けアプリ「AQUA FOREST」をご存じだろうか? 物理シミュレーションのエンジンをベースに、タッチパネルで水や炎といった異なる性質の物質を描いたり、加速度センサーを利用したりして「水に火炎を当てて気化させる」「iPhoneを傾けて画面上の物体を移動させる」といった課題を解いていくゲームだ。
このゲームをハドソンと共同開発したのが、物理シミュレーションの技術を使ってエンターテインメントコンテンツを提供するフィジオスだ。
フィジオスの母体となったのは、工業用に物理シミュレーションエンジンを提供しているプロメテック・ソフトウェア。プロメテック・ソフトウェアでは、「粒子法」と呼ぶ、あらゆる物質を「粒子」に見立てて計算を行う物理シミュレーションの手法をもとにエンジンを開発している。同社ではこのエンジンを利用することで、原子炉やモーターの内部など、内部構造の確認が困難な施設や製品のシミュレーションを行っている。
またその一方でゲーム部門を設立し、ゲームメーカーへのエンジン提供や前述のAQUA FORESTの開発などを手掛けてきた。そしてこのゲーム部門を独立させる形で2009年1月に設立したのがフィジオスだ。
フィジオスで現在開発を進めているのが、ウェブアプリケーション「PHYZIOS Studio」だ。
PHYZIOS Studioは、プロメテック・ソフトウェアで提供していた2次元物理シミュレーションソフト「OE-CAKE!(オエカケ)」を発展させたもの。物理シミュレーションエンジンを利用したドローイングアプリ「Drawing Studio」と、Drawing Studioで作った作品をゲームステージとして利用できるゲームアプリ「Game Studio」の2つで構成される。
Drawing Studioでは一般的なドローイングソフトで利用されるペンの代わりに、水や炎、木や燃えない壁など、さまざまな性質を持った素材で絵を描く。また、スクリプトで「床のあるところを往復する」「水を出し続ける」といった動作を制御できる画像オブジェクトの「アートピース」を組み合わせることで、「物理法則に従って動く絵」を描ける。できあがった作品はサイト上に公開してほかのユーザーと共有できる。
一方のGame Studioは、Drawing Studioで作った作品上にスタート地点とゴール地点を設定。ロボットを操作してゴールまでたどり着くというアクションゲームを楽しめる。ステージによっては「木で作られた壁にマウス操作で炎を書き、燃やすことで先に進む」とったパズル要素の強いステージを作ることもできる。作成したゲームもサイト上で公開・共有可能だ。
なおPYZIOS StudioはWindows Presentation Foundation(WPF)で構築されている。対応OSはWindows VistaもしくはWindows XP SP2、対応ブラウザはInternet Explorer 7および8となっている。そのほかの推奨スペックは以下のとおり。
現在PYZIOS Studioはプロトタイプという扱いで運用しているため、積極的なプロモーションなどを行っていないが、「クリエーターが徐々に集まってきている」(フィジオス最高執行責任者の小島英一郎氏)状態だという。「まずはクリエーターに遊んでもらって、『ゲームを作る層』から『ゲームを楽しむだけの層』までの多くの階層のユーザーを導いていきたい」(同最高経営責任者の小倉豪放氏)
フィジオスでは2009年中にも低スペックPCへの対応やゲーム種類の追加、作品やゲームを共有するソーシャルネットワーキングサービス(SNS)機能の強化などを実施して、ベータ版サービスを提供する予定だ。また、将来的にはFacebookなど外部のSNSとの連携や課金によるオプションサービスの提供なども考えているという。
フィジオスではほかにもiPhone/iPod touch向けアプリケーションも開発している。冒頭で紹介したAQUA FORESTに加えて、PYZIOS StudioのiPhone版である「PYZIOS Studio for iPhone」や、流体シミュレーション技術を使って画像をマーブル模様に加工する「Marbling」、タッチ操作で木片から彫刻を作る「Jazz Sculptor」の3つのアプリケーションを提供している。これらのソフトついてもアップデートを行っていくほか、新しいアプリの提供も予定するという。
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