例えばモバイルSMSを広告メディア化するScientific MediaのCo-FounderであるStefan Gromoll氏は、「SMSは世界で一番リーチ数の多いメディアだ。PCの普及率が低いアフリカ市場に進出したい」と語る。
また、SMSを使った決済機能を提供するブラジルFreeddomのArthur Pelanda氏は、「当面は米国市場を狙っているが、今後は携帯電話が普及しているアジア市場も考えている」と話していた。
銀行口座がない人向けに、税金や電気・水道代の支払い、カードのチャージが可能なキオスク端末をバーに無料設置し、トランザクション(取引)手数料で収益をあげるPoint of Wealth RegisterのDavid Prehn氏も、「全米で銀行口座を持っていない人は、4700万人いる」と自らのビジネスの成長性を語った上で、「同じように銀行口座を持たない人の多いアフリカ市場にも進出したい」と意欲を見せていた。
今年のトレンドとしてはもう1つ、iPhoneとFacebook、それにGoogleマップがベンチャー起業の三種の神器になっていることが挙げられる。iPhoneの位置情報やカレンダーを友達と共有したり、PCと同期させたりするサービスが多数発表され、その多くはFacebookのオープンIDをログインに利用していた。米国ではiPhoneをカーステレオ代わりに利用する人が多いらしく、iPhoneで音楽と渋滞情報を融合させるサービスもあった。
携帯電話内の電話帳やカレンダーなどの情報をほかの端末と同期したり、バックアップしたりするサービスを開発したRsevenのCOOであるAzlan S. Shahabudin氏は、「一番普遍的なサービスは何かということを考えて、カレンダー/スケジュール機能のビジネスで起業した」という。
他にも、会食の場所や参加者をアレンジするLunchster、カレンダーを友人と同期するTungleといった企業がいた。彼らは、自分たちのビジネスを「カレンダーシェアリング」または「レバレッジ・フレンド・リスト・サービス」と呼んでいる。
最後に、今回面白いと感じたベンチャー企業2社を紹介しよう。Weelsは、大学生2人と高校生1人が起業したベンチャー企業だ。「ウェブ閲覧活動のほとんどはドラッグ&ペーストだ」と感じた3人は、ドラッグ&ペーストで検索や買い物などができる技術を開発した。現在、英国のLondon School of Economics and Political Science(LSE)に通うMartin Shen氏は、「自分たちの世代が使いやすいインターフェースを作りたかった」と語る。
ウェブ開発のプロフェッショナルでもない若者が、プログラムを書き起業していく。これから社会の主役になる大学生、高校生のITリテラシーの高さを感じた。
もう1つ注目したZuoraのZ-Commerce for Mediaは、新聞の有料配信用プラットフォームだ。月間/年間契約、記事単位課金といった料金体系と、クレジットカード、PayPalなどの決済手段、顧客データベースなどをパッケージ化し、SaaSで提供する。同社のStrategic DirectorであるJeff Yoshimura氏は、「新聞がなくなり、ジャーナリズムが消えるのは良くない。誰が権力を見張るのか」とサービスの意義を語る。
Z-Commerce for Mediaは、いま日本の新聞社が抱えるデジタル対応という課題へのソリューションになり得る。SaaSのためメディア側がインフラコストを直接抱えずに済むという利点があるからだ。日本の新聞社は、もっとこうした動向に注目してもいいだろう。
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