IBM、微細化するチップ製造にDNAを活用

文:Brooke Crothers(Special to CNET News) 翻訳校正:緒方亮、高橋朋子2009年08月18日 13時47分

 チップ製造プロセスの微細化が進むなか、将来のチップ製造を可能にする手段として、IBMはDNAに期待を寄せている。

 米国時間8月17日、IBMの研究チームとカリフォルニア工科大学のPaul W.K. Rothemund氏は、現行の半導体製造装置に適合した表面上にDNAの「折り紙」構造を配置する手法において、新たな進歩が得られたと発表した。

三角形のDNA折り紙 リソグラフィでパターン形成した表面の幅広いライン上に、三角形のDNA折り紙がまばらに付着している様子
提供:PRNewsFoto/IBM

 IBM ResearchのScience & Technology部門マネージャーSpike Narayan氏は、声明の中で次のように述べている。「(チップ)形状の小型化にかかるコストは、ムーアの法則を維持する上での制限因子となっており、半導体業界全体が頭を悩ませている問題だ」

 ムーアの法則とは、提唱者であるIntelの共同創設者Gordon Moore氏にちなんでそう呼ばれるもので、集積回路におけるトランジスタの集積密度は約2年ごとに倍増するという法則だ。チップメーカーはこれまで40年以上の間、継続的にチップの製造プロセスを縮小してムーアの法則を維持してきた。

 しかし、製造プロセスが22ナノメートル(nm)を下回るようになると、法則の維持ができなくなる可能性がある。6月にiSuppliが発表したレポートによると、2014年までに、半導体製造装置の高額化によってムーアの法則維持が危うくなり、「業界の経済原則を変化させる」ことになるという。通常、チップ工場を新設すると10億ドル単位のコストがかかるが、チップ回路が微細化すればさらに高額になる。

三角形のDNA折り紙 三角形のDNA折り紙の1つ1つが、同じ大きさの三角形の形状を備えたテンプレートに付着している様子
提供:PRNewsFoto/IBM

 そこでIBMは、DNA分子を「足場」として利用しようとしている。DNA分子でできた足場に数百万のカーボンナノチューブを付着させることで、それらを精密なパターンに堆積させ、自己組織化させることが可能になる。IBMとカリフォルニア工科大学の研究者が共同執筆し、「Nature Nanotechnology」誌の9月号に掲載される論文「リソグラフィでパターン形成した表面に対するDNAナノ構造の配置と配向」(Placement and orientation of DNA nanostructures on lithographically patterned surfaces)によると、この手法を用いれば、22nm以降(最小6nmまで)のリソグラフィ技術がより低コストで実現される可能性があるという。

 「このアプローチの有用性は、配置されたDNAナノ構造体が足場、つまり微細な回路基板として機能することで、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤ、カーボンナノ粒子といった構成要素の正確な組み立てが可能になる点にある」とIBMは説明する。このような自己組織化と現行の製造技術とを組み合わせることで、チップ製造プロセスの中でも最もコストがかかり困難の大きい過程において、将来的に多額の費用節減が実現できるとIBMは見込んでいる。

 チップ製造に用いられるリソグラフィ技術のテンプレートは、既存の半導体に使われている技術を応用してIBMが作成した。この既存技術は、現在コンピュータに搭載されているチップの製造過程でパターンエッチングに用いられている技術と同じものだ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。原文へ

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