生命の素となる構成要素が、半導体業界で使用される構成要素となることがあるのだろうか?その可能性はある。
IBMの科学者らは、カーボンナノチューブ(炭素原子が筒状になった、導電性を持つ物質)をDNAの分子構造内に配置する研究を行っている。ナノチューブの配列を整然と配置できた段階で、実験室で生成されたDNA分子を取り除くと、整然と並んだナノチューブの格子が残されることなる。こういったナノチューブの格子は、データ格納素子として機能したり、計算を行ったりできると考えられている。
IBMの科学者であり、リソグラフィ技術と材料工学の専門家としてこのプロジェクトに参加しているGreg Wallraff氏は、「これは、固有の形状へと自己組織化するDNAナノ分子構造である。われわれの目標は、こういった構造体をブレッドボードとして用いて、カーボンナノチューブやシリコンナノワイヤ、量子ドットを組み合わせることにある」と述べるとともに、「われわれが実際に作ろうとしているものは、他のコンポーネントを組み合わせるために用いられる、非常に小さなDNA回路なのだ」と述べている。
カリフォルニア工科大学のPaul Rothemund氏によって行われた「DNA origami(DNA折り紙)」という画期的な成果に基づいているこの研究は、まだ初期の段階に過ぎない。しかし、DNAを用いたこういった設計技術が、長らく語られてきた「自己組織化」という夢を現実のものにするための方法になると考えている研究者が増えてきている。
また、こういった方法で製造されたチップは非常に小さなものになるだろう。DNA技術を使うことによって、小さいものでは2ナノメートルという線幅を実現できる可能性がある。今日における最先端チップの線幅は、平均すると45ナノメートルである。(1ナノメートルは10億分の1メートルである。)
IBMの生化学者であり、有機分子と無機分子を連携させる研究に取り組んでいるJennifer Cha氏は「今のところ、これ以外の方法はない」と述べている。
半導体製品の製造は現在のところ、機械設備を使って素材を操作するトップダウンのアプローチで行われている。自己組織化を使用する場合、分子固有の化学特性と物理特性、および環境因子によって、素材を複雑な構造へと整列させていくことになる。詰まるところ、雪の結晶と同じことを実現しようとしているのだ。
しかし、素材の振る舞いを正確かつ秩序正しいものにするには難しい問題が残されているため、DNA技術の出番となるわけだ。DNAは予測可能な方法で結合、反応を行う特定の塩基構造(グアニンとシトシン)から構成されている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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