女性向けのケータイ恋愛ゲームが熱い!と紹介して、「なるほど確かにそういえば」と思う読者はあまり多くはないのではないだろうか。認知度はまだそれほど高いわけではないが、今年に入り、モバイル以外のメディアにおいても(当文章もそうなのだが)露出も増え、「女性向け恋愛ゲーム」の存在を認識する人は増えてきたように思われる。
モバイル市場においても、女性だけに限ったサービスとして、これほど急速に市場を形成するまでに至ったケースは少ない。
例えば、iモードのメニューリストに所属する恋愛ゲームサイトだけを取り上げてみても、2009年7月現在で101のメニュー存在する。iモードのゲームサイトが全体で約700であることから、今や7つに1つが恋愛ゲームである。これは数あるゲームカテゴリーの中で最も所属メニュー数が多い状況だ。さらに、この恋愛ゲームカテゴリーが2008年3月に新設された最も新しいカテゴリーということも見逃せない。iモード創成期から存在し、それまで最も多くのメニューが所属していたミニゲームカテゴリーを、数の上では1年もかけずに、いともあっさり抜いてしまったということになる。しかも、この内80%が女性を対象としているゲームであり、さらに毎月3〜5サイト程度の割合で拡大傾向にある。この動きはこれからも続いていきそうだ。
なぜ、これほど多くの参入が短期的な中で実現できたのか、人気の要因は何なのか、今後の恋愛ゲーム市場を占う意味でも含めて考えていきたい。
そもそもここで取り上げる「女性向け恋愛ゲーム」だが、ゲームスタイルをあえて定義すると「選択分岐型のノベルゲーム」である。もちろん恋愛をテーマにしたゲームは多数あり、内容によりゲームシステムもさまざまだが、支持を集めているゲームには一定の特徴が見られる。その特徴を理解頂くためにも、ここで具体例を挙げたい。今の女性向け恋愛ゲーム勃興の先駆けになったゲーム「恋人はNo.1ホスト」である。
恋人はNo.1ホストは、ストーリーが選択肢により分岐していくタイプの、いわばノベルゲームである。主人公である女性が、ホストとの恋愛を楽しんだり、お気に入りの男性をクラブのナンバーワンに育成することが目的となる。
特徴的なのは、そのゲームシステムで、1日に読み進められる内容(10分程度)が決められており、現実の時間で24時間(現在は12時間)経つと続きが楽しめるといった流れになっている。ひとつのストーリーは10日程度で読み終えることができ、マルチエンディングのため、同じストーリーでも複数回楽しむことができる。1日のストーリーを読み終えた後、相手キャラクターから実際の携帯電話にお礼やお誘いのメールが届くといった、アプリ内に留まらない新たな試みも取り入れられていた。
恋人はNo.1ホストは、2006年12月にサービスが開始されたが、iモードに恋愛ゲームカテゴリーが無かったこともあってか、当初シミュレーションゲームカテゴリーに所属していた。「ダービースタリオン」や「三國志」といった男性に支持されるゲームが多数ある中で、異色の存在であった。
また、先にも述べたようにプレイボリューム(プレイ時間)に制限が設けられているため、じっくり腰をすえて攻略していくようなゲームではない。そのため、他のシミュレーションゲームと比較した場合、支持され難いのではといった見方も当時されていた。
この予想に反し、当ゲームはすぐに人気のゲームとなり、コンシューマ向け人気シミュレーションゲームを配信するサイトと肩を並べるまでに至った。理由として、キャラクターやストーリーの魅力はもちろんだが、特殊なルールやシステムを必要としないゲームとしての敷居の低さと、あまり長い時間を要さずプレイするモバイルゲームユーザーの特性と、今までゲームとは無縁だった女性ユーザーへのアプローチを行った複合的要因によるものと推測される。その後、恋人はNo.1ホストは「comic B’s LOG」でコミック化されるなどの他メディア展開も行われ、数少ないモバイル発信コンテンツとしての好例にもなっている。
いずれにせよ、当ゲームはその後の他恋愛ゲームにも大いに影響を与え、同様のスタイルでサービスするサイトは数多く存在する。今や女性向け恋愛ゲームと言えば、ほとんどが同スタイルを取り入れたゲームであると言っても過言ではないだろう。
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