ソニー、赤字転落も構造改革効果は予想以上に進展--金融は好調

別井貴志(編集部)2009年07月31日 08時00分
代表執行役副社長CFOの大根田伸行氏 代表執行役副社長CFOの大根田伸行氏

 ソニーは7月30日、2009年度第1四半期決算(4〜6月期)の連結決算(米国会計基準)を発表し、世界的な景気後退や円高などが響いて売上高は減少し、利益も赤字に転落したが、 前期決算を発表した「5月に予想していた業績よりはよい結果で、構造改革効果によるコスト削減が想定を上回るペースで進捗している」(代表執行役副社長CFOの大根田伸行氏)という。

 この四半期の売上高は1兆5999億円(前年同期比19.2%減)だった。営業利益は、営業損益は257億円の損失(前年同期734億円の黒字)と、赤字に転落した。売り上げが減少したことに加えて、

  • 連結業績

    出典:ソニー業績説明会資料

円高による影響が約680億円、構造改革費用の増加が334億円、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズなどの持分法適用会社の業績悪化の影響が173億円などの要因があった。なお、構造改革費用の影響や持分法による投資損益を除いた営業利益は233億円の黒字だった。

 また、税引き前利益や純利益も赤字に転落した(右画像参照)。

 事業別の業績は、2009年4月1日の機構改革によって、今回の決算から事業のセグメント区分が変更されている(下画像参照)。これまでのエレクトロニクス分野とゲーム分野に含まれていた事業を再構成し、コンスーマープロダクツ&デバイス(CPD)分野、ネットワークプロダクツ&サービス(NPS)分野、B2B&ディスク製造分野を新設した。

  • セグメントの変更について

    出典:ソニー業績説明会資料

  • セグメント別の売上高と営業利益

    出典:ソニー業績説明会資料

 テレビ事業やデジタルイメージング事業、オーディオ・ビデオ事業、半導体事業などを含むCPD分野の売上高は、価格競争の激化もあって7743億円(前年同期比27.3%減)と大幅に減少した。液晶テレビ「BRAVIA」やデジタルカメラ「サイバーショット」、ビデオカメラ「ハンディカム」がいずれも減収。販売台数は、液晶テレビが320万台(前年同期310万台)、ビデオカメラが140万台(同180万台)、コンパクトデジタルカメラが500万台(同610万台)だった。

 CPD分野の営業利益は20億円の損失(前年同期361億円の黒字)と大きく落ち込んだ。販管費の圧縮や売上原価率の改善も減収や円高の影響をカバーできなかった。この中で、コスト削減により「BRAVIA」の損益は改善している。

  • コンスーマープロダクツ&デバイス(CPD)業績

    出典:ソニー業績説明会資料

  • コンスーマープロダクツ&デバイス(CPD)営業利益増減要因

    出典:ソニー業績説明会資料

  • 各製品の販売台数など

    出典:ソニー2009年度第1四半期決算補足資料

  • ネットワークプロダクツ&サービス(NPS)業績

    出典:ソニー業績説明会資料

 ゲームやPC、デジタルミュージックプレーヤーなどを含むNPS分野の売上高は、ゲーム事業とPC「VAIO」が不調で2468億円(前年同期比37.4%減)と大きく落ち込んだ。販売台数は、PLAYSTATION 3(PS3)が110万台(前年同期160万台)、PSPが130万台(同370万台)だった。また、VAIOの販売台数は110万台(同120万台)。営業利益も減収のほか、単価下落などの影響を受けて397億円の損失(前年同期46億円の黒字)と赤字になった。

  • 金融業績

    出典:ソニー業績説明会資料

 このほかの分野別では、相対的に金融が好調だった。この分野には、ソニーフィナンシャルホールディングス、ソニー生命保険、ソニー損害保険、ソニー銀行などが含まれる。金融の売上高は2276億円(前年同期比24.3%増)と2桁の増収だった。日本の株式市場の上昇による運用益や保有契約高の堅調な伸びや保険料収入の増加により、ソニー生命の売上高が2005億円(同29.2%増)と伸びたことが寄与した。これに伴い、金融分野の営業利益も475億円(同72.1%増)と大幅に伸びた。

 2009年度の通期業績予想は、売上高が7兆3000億円、営業損失1100億円、税引前損失1400億円、純損失1200億円と、5月14日に発表した数値から変更はしない。構造改革効果によるコスト削減は予想以上に推移しており、CPD分野の業績も想定したほどは悪くなかったが、「事業環境が引き続き多くの面で不透明であることを考慮して」(大根田氏)、上方修正などはしない。

  • 2009年度連結業績見通し

    出典:ソニー業績説明会資料

  • 設備投資、減価償却、研究開発費見通し

    出典:ソニー業績説明会資料

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