社団法人 日本レコード協会は7月30日、インターネット上における音楽著作物の違法流通対策などを周知するため、記者懇談会を開催した。ゲストとして参加した文化庁長官 官房著作権課 著作物流通室長の川瀬真氏は、2010年1月から施行される改正著作権法の内容と狙いなどを説明した。
改正著作権法は、著作物を無断でアップロードする側だけではなく、ダウンロードする側も違法としたことが大きな特徴。ただ、悪意を持たないユーザーであれば依然として第30条に規定された私的使用として認めているほか、悪意を持った確信犯的な違法ユーザーの場合でも罰則規定を設けていないなど強制力は弱く、施行前から効果を疑問視する声もある。
こうした点について川瀬氏は、「罰則や民事訴訟をもって解決を図るのではなく、まずはルール変更を国民に伝え、著作権への意識を高めてもらうことが大事」と説明。「個人のダウンロード行為が社会正義に反しているということではなく、それらが積もることで権利者などに悪影響を与えているということ。幸いにも日本人は遵法意識が高く、ルールの周知徹底を図ることによる効果は十分に期待できる」とした。
周知徹底においては、日本レコード協会を含む民間の権利者団体などと協力した官民一体の体制を敷く方針を示している。協会の副会長で、広報委員長を務めるキングレコード 代表取締役社長の小池武久氏は「(改正著作権法は)違法流通を撲滅するチャンスととらえている。さまざまな方法で若年層を中心に周知徹底をするつもりだ」と応じた。また、罰則規定が盛り込まれなかったことについては、「まずはルール改正を広めていくことが先、という認識で一致している」(日本レコード協会 情報技術部部長 兼 法務部担当部長の畑陽一郎氏)と納得済みの方針であることを示した。
日本レコード協会の調査によれば、2008年の違法ダウンロード件数は4億700万件で、調査を開始した2006年以降も年々増加傾向にあるという。協会では、こうした違法行為の温床となっている携帯電話向けの掲示板サイトに対して強い懸念を示しており、30日付で大手掲示板運営事業者8社に対し、自主的な監視、あるいは違法ファイルの削除などを求める要請文書を提出した。
「掲示板サイトの場合、個々のユーザーに営利目的はないものの、サイト運営者を含む中心部分には(広告収入など)営利目的が含まれている。また、広告の中には詐欺まがいのものやアダルトサイトなども含まれており、青少年ユーザーが2次的な被害を受ける可能性もある」(畑氏)。一方、過去に違法と認定して刑事摘発を受けたサイト運営者についても違法認識から摘発まで1年以上の時間を費やしたとして、違法根絶を目指しつつもユーザー側に配慮して慎重な解決策を望む姿を示した。
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