小型一眼レフ、ペンタックス「K-7」開発秘話--“隙のないモノづくり”の裏にあるもの - (page 2)

――今回、新たなバッテリが開発されましたが、なぜでしょうか。

若代:K10D、K20Dは共通バッテリを採用していましたが、今回は「D-LI90」という約980枚の撮影が行える新型のバッテリに切り替えました。

  • 新開発したバッテリ

 従来機との互換性はなくなっていますが、ライブビュー撮影や動画撮影など、バッテリ消費の激しい使い方が予想されているのでそれらに対応しつつ、大容量のバッテリを用意しました。

 その際、ボディサイズが大きくならないようにバッテリボックスを縦にしたり横にしたりとデザインの段階でだいぶ工夫しました。

――撮影支援機能も搭載されていますね。

  • 手ブレ補正機構「SR」(Shake Reduction)の動作図

若代:シャッター速度換算で最大約4段分の効果がある手ブレ補正機構「SR」(Shake Reduction)を利用した「自動水平補正」と「構図微調整」というものを搭載しています。どちらも写真の作り込みという意味では面白い機能だと思います。

 そもそもK-7に搭載した「SR」は、撮像素子を動かしてレンズから入射された光軸のズレを調整するというシステムです。つまり、撮像素子が動くのです。この動きを利用することで自動水平補正と構図微調整を実現しました。まず、構図微調整機能とは、三脚を使ったライブビュー撮影で効果を発揮する機能です。

 十字キーを使って左右上下に構図を微調整できます。本来であれば、カメラ自体を動かさなければならないような状況であっても無理なパースをつけずに調整することが可能なのです。そしてもう1つの自動水平補正とは、自分でも気づかないようなわずかな傾きをカメラが自動で相殺し、水平に近づける機能です。

 どちらも、撮像素子が動かなければ成し得なかった機能と言えますね。

――手ブレ補正機構である「SR」を利用して新しい機能に活かすという発想は面白いですね。

若代:お客様からセンサを動かせるようにしてほしいという要望が来るわけがありませんので、こういった機能のアイデアは、開発陣から出てきます。ただ、すんなり機能の搭載が決まるわけもなくて、レンズによるケラレ(画面の一部が暗くなる)の問題をどうするか?といった良い意味でのアンチ意見などもあり、紆余曲折を経た結果として搭載した機能です。機能のON/OFFがあるのはそういった経緯からです。妥協せず、常にチャレンジしたいと思っているんです。

――デジタルフィルターがさらに強化されています。

若代:写真をキレイに撮りたいという人が作品作りの一環として利用するパターンが多いらしく、新型機(K-7)にも「デジタルフィルター」を搭載してほしいという要望が多くありました。盛り込んだデジタルフィルターの内容は、K-mが発売されてしばらくたった後にアンケートをとり、要望のあった「ミニチュア」や「フィッシュアイ」などのフィルター機能を搭載しています。

 もともとの発想としては、パソコンを使ってバリバリ補正をかけるのではなく、カメラ内で処理して多くの人に手軽に楽しんでもらいたいというのがありました。また、フィルターの重ね掛けが行えるのも特徴です。複数のフィルターを重ね合わせることで作品性を高めることができます。K-7では、どのようなフィルターをかけたのか、その履歴をチェックできるほか、かけた内容を別の画像に施すこともできるようになりました。

川内:東京都新宿にあるペンタックスフォーラムで、K-mのお客様から写真を提供していただいて写真展を行ったのですが、半分以上がデジタルフィルターを使った作品でした。写真を撮りたいと思う人のベースはキレイに撮りたいという“記録”なのだと思います。

 それが、デジタルフィルターを使うことで「アート」になる。弊社のデジタルフィルターは後加工が可能なので、撮影後の移動中などで“作品”を作り込むといったことが可能です。搭載された液晶モニタも高精細で3型という大きなモニタになりましたから、確認作業も容易です。また、大容量バッテリにより長時間の利用が可能になったことも大きいと思います。

――絵づくりはどのように変化したのでしょうか

若代:写真の色合いなどをコントロールする“カスタムイメージ”に「ほのか」というプリセットを加えました。コンパクトデジタルカメラをはじめとして、今までの絵づくりというと鮮やかでメリハリをつけるというのがベースになってきたのだと思います。

 しかし、中には淡い色遣いを好む人がいるだろうということで「ほのか」というプリセットを採用したわけです。従来、カスタムイメージで採用している「鮮やか」や「雅(MIYABI)」といった鮮やかな絵づくりが好まれていましたが、最近では撮影者や被写体によってイメージするもの(好み)が変わってきているようです。多種多様になっているからこそ、カスタムイメージで鮮やかなものから淡い色遣いまで対応できるようにしています。この思想はデジタルフィルターにも反映されています。

鮮やかな「雅(MIYABI)」と淡い色合いの「ほのか」 鮮やかな「雅(MIYABI)」と淡い色合いの「ほのか」

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