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スタートアップ企業の徹底支援で投資の成功率を高める--グローバル・ブレイン百合本氏(前編) - (page 2)

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百合本:投資先には、主担当と副担当の2人をつけます。主担当はその会社を発掘した人間、副担当は同行訪問した人の中で、その会社に興味を持った人です。2人で担当するというのは特徴だと思います。

 それ以外に、A.T.カーニーとかアクセンチュアなど外資系のコンサルティングファーム出身者で構成するビジネスモデルチームや熊倉が主担当のIBMやニフティなどの大手IT企業との協業を推進する部隊もあります。必要に応じて随時、主担当や副担当と一緒に考えていきます。

 弊社にはジャスダック証券取引所の審査をやっていた人間や監査法人出身者もいます。IPOの支援では、おおむね1社当たり5〜7人の担当者が張り付いて、最低3年、長くて7年にわたって中長期的なスタンスでご支援します。

 支援する企業の取締役にもなっています。上場したのちも監査役になっているケースもあります。キャピタルゲインの追求だけを考えると、自由に保有株を売れるように、何の役職にもなっていないほうがいい。でも、それは短期的な話であって、5年くらい保有し続けると考えれば、あまり関係ない。取締役、監査役として経営に関与することのメリットの方が大きいです。

--現在の経済状況をどうとらえていますか。また、ベンチャーキャピタルの投資動向はどうなっているのでしょうか。

百合本:大手ベンチャーキャピタルがいまアーリーステージに来なくなって、今年に入って、競合がいない状況です。われわれとしては好機到来、100年に1度のビジネスチャンスです。もちろん、非常に大変な時期ではありますが、社内的にはそういう風に位置付けています。

 旧来型のベンチャーキャピタルのビジネスモデルは崩壊しつつあります。旧来型というのは、広く浅く投資をして、その中から10パーセントくらい株式公開すれば、トータルで利益が出るというビジネスモデルだったわけです。

 旧来型のベンチャーキャピタルはみなさん、営業力は強くて、営業力でカバレッジを広くして、多数のベンチャーに投資していたわけです。ところがそういうやり方はいま通用しない。上場の審査が厳しくて、本当に優秀なベンチャーしか公開できない状況になっている。したがって、投資した中で10パーセントのベンチャーが公開するということ自体が難しくなっています。

 また、大手ベンチャーキャピタルは最近、公開が見えた段階で投資しているが、初値の時価総額は直前の時価総額の1.6倍くらいしかない。レイターステージで投資しても利益は出ないのです。もちろん、株式市場の低迷が原因なのでしょう。株価が上がってくれば、問題ないのでしょうけれど。こう考えると、上場しているベンチャーキャピタルが赤字なのは容易に推測がつきます。

--御社の業績はどうですか。

百合本:決算は12月です。前期(2008年12月期)は増収増益ですし、おそらく2009年12月期も増収増益となる予定です。厳選投資をして、デイリーのオペレーションに徹底的に関与して成功の確率を高めているからです。

 繰り返しになりますが、リソースを大量に投下して、デイリーのオペレーションに関与していくという作業は、面倒くさくて誰もやりたくない。そういう“人のやりたくないこと”を徹底的にやることで差別化を図っているのです。

 これが7年くらいやってきたわれわれの戦略であり、業界ではユニークなビジネスモデルだと思っています。創業者と同じくらいのタイミングで企業に投資をしているので、1社公開すると、50倍から100倍くらいのリターンがあります。ファンドの内部収益率(IRR)ベースの目標は大体20から50パーセントを最低ラインとしていますが、いままで述べたような手法によって初めて実現できるのです。

--これまでのファンドレイズ(資金調達)や投資実績について教えてください。

百合本:最初に投資したときは今と経済環境が結構似ていました。われわれは2001年、森トラストからお金をお預かりして初めてファンドレイズしました。当時はドットコムバブルがはじけた後で、ITのアーリーステージにどなたも投資しない状況でした。ですから、フェアウェイは広く空いていました。だったら、そこに投資しようと始めたのです。結果的にはそれが非常によかった。

 今回もファンドレイズは2007年と2008年で終わっているのです。幸運にもこういうサイクルに乗れています。2001年の森トラストとのファンドの規模は10億円でした。アーリーステージの会社ですから実はあまりお金は必要ありません。大体1社1億円。それが10社で10億円。そういうイメージです。

代表取締役社長の百合本安彦氏

 1号ファンドのパフォーマンスがよかったので、森トラストとは2007年、第2号ファンドを設立しました。20億円に増額となりました。

 ニフティとは、コーポレートベンチャーキャピタルという仕組みで取り組んでいます。単にキャピタルゲインを上げるというのではなくて、ニフティの新しい事業創出のために協業の相手をわれわれが発掘投資する仕組みです。これも業界としてはけっこう新しい仕組みだと思います。ウィングという名前で2005年の4月に15億円でスタートして、すでに2社株式公開しています。

そのうちの1社は2008年8月7日に株式公開した通販のバックヤードを一気通貫で支援するトライステージです。リーマンショックの始まる直前でした。もう1社はデコメの会社でアイフリークです。こちらも創業当初から投資していますので、ニフティとの協業だけでなく、収益的にも利益が十分上がりました。そのほか、SBIグループの元のイー・トレード証券(現SBI証券)から20億円お預かりしています。

 今年もファンドレイズを検討はしています。しかし、何百億円を預かるわけではなくて、10億から20億円あればビジネスできますから、当面はこの3本のファンドを中心に運用していきます。

--運用するファンドは2人組合が多いのですね。

百合本:トライステージもそうですが、公開してからさらに伸びる会社があります。そういった場合、新興市場に公開した瞬間に株式を全部売るのではなくて、たとえば3分の1だけ売って、3分の2については東証1部上場まで持たせて頂きたいとか、2人組合ならば交渉できます。LP(出資者)がバラけていては絶対無理です。投資先の要望があれば交渉しています。公開後にすぐ売ると結果的にそれが株価を下げる要因にもなってしまいますしね。

 事業会社が出資者であるというのも特徴です。機関投資家へはいっさいアプローチしていません。営業も一切していません。そこも大手ベンチャーキャピタルとは違います。投資パフォーマンスには自信を持っているのですが、たくさんは集めないからです。ファンドのサイズも決めていまして、だいたい10億〜20億円くらい。これには理由があります。

 たくさん集めると楽なのですが、いろんなものに投資しなくてはいけなくなって、当然質が落ちてきます。いい会社を厳選して投資するというのは限界があります。大体10億〜20億円くらいが限界なのです。

 ただ、そのくらいの額だと管理報酬も非常に低いのです。管理報酬は2〜3パーセント。これは業界の平均水準だと思いますが、われわれは支援にお金をかけており、管理報酬だけでは人件費も吸収できず、運営費も出ません。また、投資先の支援に関してコンサルティングフィーなどのお金を一切もらっていません。

 創業者と同じで株式公開しないとわれわれも一切実入りがない。そういう状況にして、みんなでがんばるわけです。Win-Winの関係ですね。頑張って実績を上げるしかない。

--複数の性格が異なるファンドを並行して運営するのは難しくありませんか。投資期間も重なります。

百合本:ニフティははっきりしていて協業の相手になるかどうか。SBIと森トラストは純投資なので、残高に応じた金額を同じ割合で投資しています。利益相反にならないように注意しています。ファンドの期間は大体、7〜8年ですので、ちょうどいまから仕込み時期です。

--投資期間は10年程度が主流です。比較的短いのではないでしょうか。。

百合本:7年くらいに設定することで、支援活動を加速させる必要が出てきます。そこもわれわれ自身に対する1つのプレッシャーにはなっています。われわれのノウハウも蓄積されていまして、本来、7年かかる投資期間を5年に短縮することもできます。もちろん、合意があれば、2人組合なので延長もやりやすいです。

--現在のIPOの状況をどうみていますか。

百合本:たとえば、マザーズに上場したトライステージ。設立の時に投資させていただいて、実は3期、2年半で公開しました。2009年2月期の決算で売上高250億円、20億円の経常利益です。消費低迷の中、通販は20パーセントで伸びている。通販番組の仕入れ、番組の制作、商品選定、放映後のCRMのアウトソーシングを受ける…こういうトータルでサービスを提供する会社はないのです。電通が最近、同様のサービスを提供する電通ダイレクトフォースを作りましたが、それでもトライステージはシェア30%くらいを獲得しています。増収増益でもありますので、将来東証1部に行くことも問題ないと思っています。

 こうしたいい会社は問題なく上場できると思います。ただ、マザーズなど新興市場にどんどん上場できるかというと、そうではない。いい会社しか上がれない状況になりそうです。2009年はまだ6社(編集部注:インタビューは5月に実施)。2008年は49社でしたか。今年はそんなに増える感じもしない。

--ベンチャーキャピタルとしてIPOにはどのようにかかわっていますか。

百合本:ベンチャーキャピタルとして上場のプロセスには積極的にかかわっています。監査法人や証券会社を選定したりとか、もちろん、証券会社との交渉に同席したりとか。証券会社とベンチャー企業が証券取引所と交渉する際にも、審査が進む中で、毎週のようにいろんな質問がきます。それに対してどう答えていくかはきちんと支援しています。また、ジャスダック、東証、大証ヘラクレスなどとは一緒にセミナーを開催したり、情報交換を行っています。

 通常、日本のベンチャーキャピタリストはIPOの過程にはノータッチです。しかしそれにはリスクがあります。IPOでは早く公開するだけではだめ。株価を適切に評価してもらうには、市場の選定も必要だし、タイミングを見て満を持して市場に出す必要もある。当該会社とは十分に話し合って相談に乗っています。最近では審査自体が厳しくなっています。流れに身を任せているだけでは、株価が低くなるどころかIPOじたいだできなくなる可能性もあります。

--起業する人たちにとっては、いまはどのような環境でしょうか。

百合本:IPOの状況などを考えると、ベンチャー企業を起業する環境としては、いいとは言えません。銀行などの金融機関による貸しはがしや取引先の倒産など悪い材料は多く、いい人材は大企業を辞めずベンチャーに流れない。消費者も賢くなって、相当差別化した商品でないと買わなくなっている。全体的には非常に難しい。私は東京工業大学の授業を持っているんですが、優秀な学生は大企業に行って、起業する人は減っていますね。

 ただ、そう後ろ向きに考えることはなくて、そういう意味ではチャンスは広がっています。景気がいい時は誰も彼も創業してそこそこ成長するのです。そして、みんなそれなりに注目される。ただ、いまはそんなことはできません。いい会社しか残らないのです。ですから、いい会社、優れた起業家からするとチャンスでもあるのです。

 以下、後編に続く。

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