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医薬品のネット販売規制で世論巻き起こるか--ターニングポイントの検討会議事録

別井貴志(編集部)2009年05月03日 10時05分
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 改正薬事法がこの2009年6月1日に完全施行される予定だ。目前に迫ったこの時期にきてもまだ、「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」(構成委員・メンバーPDF)の議論は続いている。

 この検討会は、舛添要一厚生労働大臣が、改正薬事法の完全施行(省令)について「議論がまだ十分につくされていない」「国民的議論がなされてない」とし、みずからの指示で設置された。完全施行に至るこれまでの経緯や直近2009年4月28日に開催された第5回検討会の内容などは、「改正薬事法の完全施行は土壇場で厚労省がどんでん返し--委員の不信感も募り混沌」に掲載したので併せてご覧いただきたいが、ここでは非常に重要なターニングポイントとなったその第5回検討会の内容を議事録として公開する。

 厚生労働省が、さらなる省令案の改正を念頭にパブリックコメントを募集したい旨を述べて、検討会は紛糾した。検討会は予定時間の2時間を超え約2時間半だったが、そこに至る過程が読み取れる後半の30分強を以下に挙げる。各委員の敬称は省略させていただいた。また、傍聴時の手書きによるメモのため、語尾や言い回しが実際とは異なる部分があるかもしれないが、ご容赦願いたい。

足高慶宣(日本置き薬協会常任理事長):情報伝達という部分においては、ITは確かなものがあるでしょう。ただ、情報を受け取る側からすれば対面販売。私として、回答がほしいのは、ネットを使って対面販売であることの優位性、たとえば相手さまが気付かない病気を発見してあげるとか、相手さまがいかにも自殺するために薬をたくさんほしいんだという時にそれを止めるとか、ちょっとした説明ではわかりにくい部分をわかりやすい日本語の言葉を使って説明して、なんとか伝達するとか、そういった面をどういう風にカバーするのか。克服する手段があるのか。ここ3、4年はずっと検討してきたと思います。そうでなければ、対面販売が単なる情報伝達としてのペーパーを1枚渡す、そしてそれを代わりに読み上げる、それと同様ものであるならば、私ども配置薬の形態であろうが、店舗販売の形態であろうが、専門家がいったいなんのためにいるのか。

井村伸正(以下座長、北里大学名誉教授):(國領委員の資料に対して)気になったのは、4年も5年もかけて議論してきた我々としては、リスクコミュニケーションなんていうのはそのものを議論してきたつもりで、いまさらそれを大事だと言われてもなんとなくしらけてしまう。今までの議論はそういうことを議論してきたことを認識していただきたい。

小田兵馬(日本チェーンドラッグストア協会副会長、小田薬局代表取締役社長):後藤委員の話はまったく持ってその通りで、私どももネット販売と言うことに関しては、別の場で議論すべきではないかと申し述べてきた。そして、これには賛同いただけたかなと思っています。そういう意味では、この資料の提出の宛先がこの検討委員会になっているが、これは出し先が違うのではないか。当面の間考えられないか、ということが書いてあるが、これに関しては検討委員会で論じるべきなのかどうか。事務局側にも問いたいが。

児玉孝(社団法人日本薬剤師会会長):後藤委員の提出資料は全体のトーンを見ると、私はいままでこの検討会で後藤委員も三木谷委員も消費者、生活者のためにネット販売が必要だとずっとおっしゃってこられた。ただ、この文章の中身をみると、どうも結果として業者が困るというトーンが多い。そのうえで、こういう措置をしてほしいとおっしゃっている。ましてや、取り扱う医薬品の範囲に関する制限、あるいは販売方法に関する制限、そういったことを認めてもらいたいというのであれば、なんのためにこの検討会が用意されたのか、私には理解できない。やはり、一生懸命貴重な時間を割いてここまで議論してきたのだから、これを認めろと言うんだったら、ぜんぜん意義がないと思っておりまして、私はこれについてはまったく理解ができません。私どもは、あくまでも、インターネットの議論をするのであれば、それはそれで大変大きな問題だと。日本の薬事法の根幹に関わる問題だと。やるならそれで、きちんとやってほしいと言っているのであって、この資料は新たな医薬品の販売を前提としたものであれば、私どもはいっさい認められないと思います。

阿南久(全国消費者団体連絡会事務局長):お願いの資料については、新販売制度をとろうとしたのはずいぶん前のこと。その時点から現実的にそれぞれどういう努力をしてきたのか。あと1カ月しかないと言われても、新販売制度に伴う自分たちの生き残りや消費者理解について何をしてきたのか、ぜひ聞きたい。

三木谷浩史(楽天代表取締役会長兼社長):2つある。困る人がいっぱいいる。中小の薬局が困るのも事実。その配分がおかしいというなら、お詫びするしかない。いまさらなんなのだという部分については、日進月歩にいろいろなことが進んでいる中で、4年前は医薬品販売も今の5分の1とか10分の1とかの規模だったんだろうと思う。そういう意味で、市場拡大、ユーザーの拡大もしている中で、検討会の皆さんに十分な情報提供をやってこなかったというのは申し訳ないことだとお詫びします。医薬品だけにかかわらず、ネット販売の安全性については、我々の生命線でもありますし、特に今回の新ガイドラインに向かって6月1日に向けて相当な開発費や、薬局さんには相当な人的な負担というのは発生するが、努力しているところです。

井村座長:私はうまくいかない座長で申し訳なく思っているが、なんとなく私自身はネット販売の規制に関して賛成するとか反対するとかという点に関しては、この5年にわたって議論をお伺いしているのですが、この検討会に関してはその議論に関して白紙でいようと思って努力をしてきたつもりだが、最後にちょっと申し上げたいのは、前回までの検討会に関しましては、医薬品販売制度改正検討部会からここに至るまでは、その検討会において利害が相反する方々がかなりおられましたので、これはまとまらないのじゃないかと危惧してきた。にも関わらず、非常に妥協点を必至になって見い出そうという努力がありまして、その検討会のたびに報告書をまとめることができました。今回の検討会に関する限りは、どうも報告書にまとめるというかたちに落とせないという気がいたしてまして、これはあり得ないだろうな、と思っております。それで、私はみなさん方のご意見はとにかくたくさん出てきました。1つ1つ記録が残ってます。論点も一応整理されました。とにかく、ご意見は並んでおります。だけど、どうも私はネットで医薬品を販売しようと、大々的に利便性を高めようとお考えになっている方々と、何年にもわたって安全な供給というのものを前提にして必至になって妥協しながら考えてきた委員との間には、因って立つ基盤がぜんぜん違うのではないかと認識しております。従って、結論をまとめるというのは不可能な感じがしている。何を言いたいかというと、意見がちゃんと出てますので、この意見を全部くんでいただいて、そうしてこれに対してどういう措置をとるかと言うのは行政の責任だと思いますので、ここから先は行政に考えてもらいたいという気がする。これは厳しい言い方かもしれないが、これはどうしても行政にやっていただかなきゃなたないことだと思いますので、そういう措置になるかはわかりませんが、とにかく一度それを考えていただきたい。考えていただいたうえで、何か議論をする機会があればそれはそれでよろしいかなと。その辺で、この検討会をやったことの意味があるという結果になれば非常にありがたいと思います。さしあたって私は本当に困った方がいるかどうかを真剣に考えた。もう一度考え直して確認をしてみた。完全に確認はできないけれども、一応手立てとしては、こういうこともあり得るという提案も出ている。それが十分か十分でないかと言うことに関しては意見が分かれると思います。でも、そこまではやったというのは一応の意味はあったと思います。インターネットに関しても、私はおまえらのやっていることは憲法違反に肩入れしているんだぞというような意見が最初にありまして、非常にびっくりしましたが、そこから比べれば非常にリーズナブルなご提案のようにも見えます。この検討会でやるべきことではないと思う。とにかく、こうした意見が並べられたところで、行政のほうで何かしていただきたいと思うのですが、行政のほうはいかがでしょうか。

医薬食品局長(厚労省):我々もぎりぎりの段階に来ていることから、いろいろ考えていることがありますので、あとで総務課長から説明させますけれども、皆様方から多くの意見をいただいておりますし、それから、この場以外からも多くの意見をいただいておりますので、その中で、我々として今時点でやらなければならないと思っていることをまとめて、時間はありませんけれども、各方面の意見を伺いたいと思っていることがあります。皆様におはかりすることなくするのは大変失礼だと思いますが、時間的な制約もありますので、私どもの意見を早急にまとめて、世に問いたいというようなことをやりたいと思っておりますので、総務課長の説明を聞いてほしいと思います。

総務課長(厚労省):いままでご議論いただいて大変厳しい言葉を、たぶんすべての委員を代表していただいて座長からいただいたんだと思いますけれども、私ども事務方といたしましても、この検討会を始めるにあたって、大臣からいろいろな宿題をいただきまして、今日はインターネットの販売ルールに関する議論になりましたけれども、たしかに時間も限られてきております。そこで、何らかの緊急的な対応というものを考えるに当たっては、その軸といたしまして、各販売事業者さんの立場、立場と言うよりは利用者の立場から本当に困っている人がいるかどうかを考えたいと。そういう中で、この検討会の中で一番大きく出ました意見というか議論といたしましては、1つは特定の漢方薬などの薬を継続して飲んでいる方々が6月1日を越して、その医薬品が手に入らなくなって飲めなくなった場合に、大丈夫なのかどうかという論点、それから離島で薬局とか店舗がない場合に医薬品を入手しようとした場合に、6月1日以降、いろいろな代替手段というのがありましたが、その手段で本当に入手する体制が直ちに整うのかという問題がございました。こういう問題に対処しようとすると、たしかに省令を改正する必要があります。そういう意味では、期限付きで経過措置を設けるということが1つの案として考えられるわけだが、それにつきまして、もし手続きを進めるとなると、パブリックコメント等の時間も必要でございます。そういう意味で、申し訳ありませんけれども、そこの具体的な内容につきましては、私どもも詰めますけれども、実施の可否も含めまして次回の検討会でご議論いただくということにいたしまして、私どもとしましては、今申し上げた大きく2点について、案をまとめた上で、パブリックコメントは先にかけさせていただけないかなと思っております。本検討会でご議論いただいてからかけるというのが本意であろうとは思いますが、時間の制約上、先にパブリックコメントを開始させていただいて、そしてこの検討会で内容および是非についてご議論いただけないかということでございます。

(約2時間経過)

三木谷:離島というところに限るというのが、では過疎地はどうなるのかなど、あるいは身障者の方々はどうするのかといったことだったり、シングルマザーなど非常にお忙しい方はどうするのかなど、といった話もありますので、離島というかなり限定的なことをおっしゃったので、そこのところについては、私どもとしては離島のみと言うことであれば、かなり隔たりがあるなと思います。

井村座長:事務局に伺いますが、離島という言葉を出されましたが、1つの典型的な例としてあげられたものだと思ってよろしいんでしょうか。

総務課長:今の時点では典型的な例として挙げさせていただきましたけれでも、いずれにいたしましてもパブリックコメントをかけるときには範囲をはっきりした上で、その範囲がいいかどうかご意見をいただいた方がより明確なご意見をいただけるものと思っております。

足高:そうすると、対面の原則と言うことを、たとえばいまの利便性等々の問題である程度目をつぶられるとすると、省令、パブリックコメントは、我々配置のほうもひっくるめた省令の改正案ということをお考えになるわけですか。

総務課長:我々が考えているのは、配置販売ではなくて店舗における販売方法、今回の場合ですとリアルな店舗として、薬局店舗として許可を得られているところが通信販売をするということに関してどういうやり方があるのかということについてご意見を伺いたいと思っております。

足高:対面の原則というところをいじくられるとすると、それは薬事法全体に引っかかってくる問題でありましょうし、販売の仕方という問題でくくられた省令で全部に影響が及んでくるかと、私は思いますけど。

総務課長:はい。あのー、事務局として意見をいうというわけではないのですけれども、先ほどご提案させていただきましたのは対面の原則というのは大前提としながら、購入困難なケースについての経過措置、期限を付けた上ですけれども、経過措置についてどういうふうに考えるかと言うことについて案を作成し、パブリックコメントをかけたいと思っております。それは、店舗か配置かということであれば店舗販売に関わる部分ということで、考えたと言うことです。

阿南:経過措置をわざと誘導するようなパブリックコメントのとりかたは私は反対です。やはり、どうやって特定の人を認めるのかと。その線引きはとても難しい。そして、経過措置が存在するというのは今リアル店舗で販売方法を間に合わせようと必死に努力していらっしゃるところは、改革しようとしていることころは、やっぱり意欲がなくなりますよ。ですし、やっぱりネット販売の解禁を期待させるという面もあると思います。そこにつながりそうなので、私は、これについては反対です。

三木谷:私どものユーザーさん含めて、本当に困っていらっしゃる方々がいて、委員の皆さんがおっしゃる安全性に十分に留意しなければいけないと思いますけれでも、困る方の困る定義というのはなんなのかを先生方と議論してきましたが、こういうかたちで、世界的に見ても中国も含めてインターネット販売を認めてきているという事実もあり、それはやはり、リアルな購入手段に対する代替手段だということがものすごいスピードでがい然かしている。我々としても、何でもかんでもやればいいんだということはまったくありませんし、襟を正して努力をしていきたいという風に考えております。そういう意味では、離島とか、特定するのは非常に難しいし、線引きは難しいと思います。期間の問題はあるとは思うんですけれども、いずれにせよネット販売は本当にできるかどうかというのは別の場で議論するということに関しては何となくのコンセンサスはあるんじゃないかなと私は感じている。それまでの間、我々の切なるお願いは、何となくではなく、2類までについては期限付きで、経過措置でやらないと、線引きというのは極めて難しいと考えます。

後藤玄利(NPO法人日本オンラインドラッグ協会理事長、ケンコーコム代表取締役社長):通信販売、インターネット販売でやっている業者の中で、我々で調べましたところ、売り上げの半分以上が通信販売というところも相当数いるんですね。6月1日以降に販売ができなくなると、本当に事業が立ち行かなくなる薬局、薬店が相当するいるという実態がありまして、困った人というのは、そのような事業者からのサービスを受けている方なんですけれども、そういう人が多数いますし、そういったことも厚労省の方にご考慮いただきたいと思います。

増山ゆかり(全国薬害被害者団体連絡協議会):利害関係がある中で、それぞれ意見を言い合って、最初は本当にまとまらないんじゃないかと私も思いましたが、後藤委員から今日事業が立ち行かなくなるという話が出ましたが、平成16年(2004年)に始まったときもいろんな事業者からそういう声が聞かれたわけですよね。だけど、いま世の中全体で、医薬品販売のあり方があまりにも問題が多すぎると。これを、とにかくきちんと是正して、正しい制度設計を、本来あるべき姿に戻していこうという議論を重ねてきたわけです。そこで、事業者の方々もそれなら協力しましょうという話になったんだと思うんですね。いまここで、ネット業者の方が事業が立ちゆかなくなるので、経過措置を設けてほしいと言った議論は、じゃあ、それまで議論してきてどう整合性をとるのかというのは本当に大事な部分だと思うんですね。また、今回厚労省のほうから、どうしたいのかというのがほとんど聞くことができなかったので、阿南委員が言ってたこととほぼ同じですが、経過措置を前提にするような、パブリックコメントをやりますというような話をされても納得がいかないと思いました。

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