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不況期に立ち上がる企業こそ成長する、投資家にとって今は「好機」--DCM伊佐山氏(後編) - (page 2)

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 リクルートの思惑と合致して、最終的にリクルートが持ち分を買い取ってくれました。米国のVCでありながら、アイデアが日本発でイグジットも日本という投資はほかのファンドではできないと思います。

 もう1つ事例を紹介します。オールアバウトという日本の会社です。アバウトドットコムという米国の会社がまだ創業間もない頃に投資しました。その後米国で上場して大成功、もしかして、ほかの国でも応用できるのではないかと考えました。

 アバウトドットコムの社長は日本でもできるのではないかと言いました。DCMのファウンダーであるデビッド・チャオは幼少のころ日本で育っているんですが、「これはおもしろい、日本でやろう」となりました。結果的にこれもリクルートとDCMでジョイントベンチャーを立ち上げて、その後ヤフーに一部株式を売りました。最終的に上場して、われわれはマイナー投資家だったんですけど、かなりのリターンを挙げました。

 これはまさに、米国でうまくいったビジネスモデルをローカライズして、うまくいかせた事例ですね。今も2、3件仕掛けているものがあります。

 もう1つ、まだ、イグジットしていないのですが、おもしろい日中の連携案件として、Oak Pacific Interactiveという会社があります。中国版のFacebookである「校内網(Xiaonei.com)」、同じく中国版のMySpaceである「mop.com」など、いろんなウェブサイトを持っているインターネットメディアのコングロマリットです。

 CEOとCOOが私の大学院時代の友人が経営している会社でして、実は、校内網も猫?も買収した事業です。かなり大きなメディア会社に育って、次に打つ手は何だろうということで、彼らは日本市場に参入したいと考えました。相談を受けて、日本市場は自力では無理だからということで、ソフトバンクを紹介し、約400億円の出資が決まりました。2008年のことです。こうした対応も、中国のパートナーと私たちが一緒に動いているからこそできる合わせ技だと思っています。日本国内でちょっとお金を儲けて日本で上場してというような、小さなストーリーではないんです。

 日本進出の事例もあります。PtoP大手の米ビットトレント。PtoPは何かと問題が多いですが、合法的にやるということで、角川ホールディングスと組んで、日本の商社も入れて、日本法人を立ち上げました。

 一番最近の事例ではRockYou。最近、SNSがプラットフォーム化してきています。FacebookやMixiがコミュニケーションツールになっています。Gmailも使わずにFacebookで完結している。そういった状況を踏まえ、もしかするとSNSがOSとなり、その上にアプリケーションをつくる会社がどんどんできてくるんじゃないかという仮説で投資したのがRockYouという会社です。競合にはSlideという会社もあります。両者をいろいろと調べまして、結局RockYouを選びました。この会社も日本進出にあたり、ソフトバンクの孫さん(同社代表取締役社長の孫正義氏)のところに行きJVを立ち上げることになりました。

 ソフトバンクはグローバルにうまく活躍できる会社に投資する。この点でわれわれと哲学が似ています。米国のモデルをローカライズ。つまり、日本のユーザーのテイストに合わせたサービスを米国のエンジニアの開発力を使って作っていこうということです。われわれは、中国およびシリコンバレーのベンチャー企業はほとんど網羅しています。TechCrunchにも出ていないような会社もカバーしています。手駒は豊富です。

--日本拠点を設けました。日本のベンチャー企業への投資は今後どうなりますか。

 翻って日本ですが、私はこれから、日本で優秀な経営者を探そうと思っています。日本でグローバルなマインドをもった経営者ってどれくらいいるんでしょうか。たぶん、そうはいないでしょう。しかし、そういうふうに変えることのできる器をもった経営者はいると思います。米国人に比べて日本人が起業家、経営者として劣っているわけではなく、そう思わせるパートナーや環境が不備であることが問題だと思っています。

 米国のほうが個人が優れているという話ではなくて、起業家を支えるエンジェル(個人投資家)やVCなり弁護士、会計士らが道筋をつけてくれる。こうしたらうまくいく、社会にインパクトを与えられると錯覚させてくれるんです。そういうソーシャルインフラというかエコシステム(生態系)があると思うんです。

 結局、人間がトライしないとなにも起こらない。トライすることをエンカレッジするような能力を持った人がたくさんいるのがシリコンバレーなんです。頭がいい経営者とか、エンジニアがいいとかではなくて、自分がおもしろいと思ったアイデアに対して「それおもしろいね」と焚きつける人がいるんです。「それやってみよう、お金は僕らが出す」、こういう弁護士や会計士を付ける。2、3年やってうまくいったら、あなたはこういうことを世の中に言えるよ。これをやってだめでも、いくらでも次のチャンスはある。それを本当に信じてやる人がいる。

 日本では一般的にVCは焚きつけることはしないじゃないですか。どうしても投資すること自体が評価につながるので、投資件数を増やすことが主たる目的になる。1件終わるとまた、次の会社に行って……という感じですよね。

 ただ、私がいま申し上げたようなやり方は、みんながやる必要はなくて、片手くらいのVCが本気で経営者を育てる気持ちでコミットして、「最低5、6年は付き合うよ、1、2年で見放さないよ」とコミットして、いい経営者と巡り合えばできないことはない。そう感じています。そういう人を早く見つけたい。

 そういう視点で、感化されやすいであろうと勝手に思っている帰国子女組とか商社出身者とか、ある程度、外国的な発想を受け入れやすい人間、ハーバードやスタンフォード、MITの大学院を出ている人間と話しながら、起業家候補を探しています。

 一方、グリーの田中さん(創業者で代表取締役社長の田中良和氏)みたいな楽天の卒業生とか、サイバーエージェントなどの日本の第一次ITブームを支えたベンチャー企業の卒業生とも積極的に会うようにしている。そういう方で、次はボスを超えるんだと思っているような人間がいれば、助けてチャレンジするのがわれわれの仕事の醍醐味だと思っています。

 潜在的にはいると思っていますね。いろいろと石をひっくり返して、何も出てこないということかもしれないけれど、私が知る範囲でいろいろな方と話して、意見交換なり、紹介してもらったりすると、なんかしなきゃいけないと思っている人はかなりいる。どうしてやらないんですかと聞くと、最終的に自信がないとか、金銭的な問題が出てくる。あと何と言っても失敗したら次に何になるの、そういうリスクに対する不安がまだすごく大きいんです。そこをある程度軽減できるような支援をわれわれが用意できれば、チャレンジする人は出てくると思いますね。

--どのように起業家を見つけ、支援するのですか。

 米国では、普段何をしているかというと、グーグルとかアマゾンとかヤフーとかイーベイなどのIT大手企業に勤務している人間と定期的にランチをして、「あなたは次どうするんだ?」と話すんです。

 彼らがその会社で出世したいんだったら、それは重要なコネとして維持するんですけど、大体半分以上の人は経営者になりたいと思っている。

 そういうときにすぐ受け入れられる体制を持っていなければならない。普段から大企業に勤めている人間、いいエンジニアなんかに「半導体のベンチャー始めない?」などと、ある程度こちらから仕掛けて「そろそろ考えているんだよね。はじめのシード資金を出してくれない」とか、「シリーズAのファンディングを手伝ってくれないか」という話になって投資するケースはけっこうあります。社内にEIRという形で、そういう人間を囲い込んで、給料もちゃんとあげて、ファイナンシャルなセーフティーを確保して--そういうのが日本はないんですよね。

--EIRについて詳しく聞かせてください。

 アントレプレナー・イン・レジデンスの略です。VCが一定期間、給料やオフィスの面倒をみて、起業家を支援する仕組みです。

伊佐山氏

 たとえば、6カ月間給料あげるからあなたのアイデアをちゃんとビジネスプランにして、売上予想もして、どういう人間を雇いたいのか、ちゃんとリストアップして6カ月以内に見せてくださいという課題を与える。それが通れば、その人たちを全員雇って向こう12カ月やるだけの資金を僕らが出すよ。そう約束して、EIRに入れるわけです。日本でもそういうEIRをやろうと思っています。

 やっぱり、そういうことをやると起業家も出てきやすい環境ができる。ちゃんと時間を決めれば、その間にいいプラン出せば、お金を出すといえば、本気度が出てくるじゃないですか。

 もっとざっくりとした例もあります。「インターネットの業界で何かしたい」「じゃあ入ってください」と。その代わり、6カ月の間に広告ビジネスなのか、物販ビジネスなのか、インフラビジネスなのか考えて、自分でアイデアを作るもよし、またはいまやっている会社を探して経営者として入るもよし、いろんなパターンがあると思うんですよ。自分でゼロからやるだけでなく、COOになるから、一緒にやろうじゃないかと口説いて、われわれにプレゼンして、通る場合もあるし、いろんな場合があるんですよ。

 EIRのやり方はいくらでもバリエーションはある。ポイントはEIR期間はちゃんとわれわれが面倒を見るし、保険もちゃんと面倒を見るし、細かい話、家族の面倒もみるし、ちゃんと給料も出しますよということです。米国だと常時、複数名受け入れています。

--今後、どういった分野が成長すると考えていますか。

 DCMで掲げているエリアは4つあります。1つは、いわゆる新しい意味でのデジタルメディア、ソーシャルネットワークです。ソーシャルネットワークは次世代コンピューティングのプラットフォームになる可能性がある。そういったものに付随するエリアは、これからまだまだ伸びていくと考えています。

 コミュニティサイトはおもしろいことにサイクルがあって、ずっと続くことはあまりなくて必ず新陳代謝があります。日本でもいつまでもミクシィ、グリー、DeNAで終わりじゃない。今日の大手に代わるものが3年後には出てくると個人的には思っています。そういう意味でも、まだまだ投資できるエリアなのではないかと考えます。

 2番目はモバイル革命。モバイルはアップルのiPhoneやGoogleのAndroidに代表されるように以前に比べ飛躍的にオープンな環境ができてきた。シリコンバレーでは、そうしたオープンな環境に対して、いろんなエンジニアが知恵を持って会社を立ち上げています。やっとここで飛躍するチャンスが出てきている。日本だとiPhoneは今のところ欧米ほど勢いないですけど、米国ではすごいですからね。iPhoneの中でビジネスが成り立つくらいです。

 3点目は流行りの言葉で言うとクリーンテックです。クリーンテックも2種類あって1つは省エネ。DCMの半導体への投資はほとんどそうです。いかに消費電力を少なくするか。どうやって電池の持ちをよくするかとか、充電を速くするかとか、電池回りの技術はクリーンテック扱いですね。これまではセミコンダクターの1つとして投資してきましたが。

 もう1つ、最近ブームで注目されているのは、エナジージェネレーションです。太陽パネル、風力、ジオサーマルなど。オバマ大統領が言うような優遇政策を出してくるならば、ここにベンチャー企業を立ち上げると有利な環境で投資できると思います。

 4つ目は人口動態の変化。日本ではいま高齢化が急速に進んでいる。中国を見ると富裕層が増えている。米国は高齢化が進んでいる。人口構成が劇的に変わっている。そういう時期だと思います。そうすると、これまで出てきたサービスはある程度修正せざるを得ない。たとえば、日本では高齢者が多くなる社会を前提としたサービスなりデバイスが出てこなければいけない。今のデバイスは若い人を対象にしたものだから、もっと高齢化社会を意識したものにしないといけない。

 直近で一番投資しているのは中国で増えている富裕層を捕らえるビジネスですね。また最近中国人が日本にきて、真似したいビジネスはヤマト運輸みたいなロジスティックス。村ごとにはあるけれど、全国的にちゃんとやっているところはない。富裕層が増えると物流も増えるし。

 クレジットカードのシステムも整っていないので、オンラインの決済もまだ普及していない。だから中国はいまだに大半はキャッシュオンデリバリーでやっていますが、キャッシュを持ち逃げするとか、われわれでは考えられないようなことが起きる。そのため、Eコマースビジネスは回らないわけです。

--日本での活動の抱負をお聞かせください。

 5年間成果が出なくても続けるつもりでやっています。すでに日本のベンチャー企業への投資、日本通信やオールアバウトなどリターンの実績を出しているので、「メンタル予算」はあるつもりです。あせらずに、グローバルなビジネスを育てていきたいと思っています。せっかく、オフィスを霞が関、国会の近くに構えたので、日本でもベンチャー支援のための政策提言もしたいと思っています。

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