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クールジャパンはどこまで真剣なのか - (page 2)

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アジア圏からの視点:中国の脅威と機会

 おもしろいことに、このような日本の状況を海外から興味深く見つめる人たちがいる。彼らは国際地政学的な視点から、日本のコンテンツ戦略の動向をうかがっている。

 首相がアジア圏の雑誌に登場した日本女性モデルを高々と掲げるように、確かに日本のソフトパワーはそれなりに海外、特にアジア圏へ浸透してきている。しかし、それらはわれわれ日本人が意図して送り出されたというよりも、運よくアジアの人たちに拾ってもらっている、今の日本が金持ち国家であるため、その象徴としての消費への羨望が溢れた存在として捉えられているからではないか。

 そう、「姿と戦略なき侵略」であり、振り返ってみれば、それらの源泉は「中小・零細企業が多く創造の基盤が弱い(「日本ブランド戦略」から)」というお粗末さであり、それに対する施策が芸術品として捉えられている。中小・零細産業をそのままの業態を保ちながら鼓舞するのでは、勝ち目がなさそうに思える。

 そんな状況をハラハラしつつも眺めているのは、実はアジア諸国だ。彼らは自国文化の保持という課題を抱えつつも、日本のコンテンツなどソフトパワーが広くアジア圏である程度の産業として勢力を持つことを期待している。その期待値としては、上流階級のみが享受できるハイブローな芸術としての位置づけではなく、市民生活のレベルでの消費が可能なレベルでのパワーのあり方である。日本ほど国民の間で消費格差が小さくない国々が多いため、そのターゲット設定は肝心なのだ。

 そんなことを彼らが願う背景には、内需を満たし、その延長上に広く存在する華人市場とその周辺外需を取り込もうとする、アジアの巨人、中国の台頭への恐れがある。ここ数年ほど続いたGDP成長率は保持できないものの、依然として巨大な人口を抱え、現在、日本や欧米諸国を襲う経済不況とは比較的隔離された内需成長を原動力に、中国では国力の増強が進む。

 そして、国民は内需の急成長によって、より豊かな文化生活を求めるようになってきている。すでに海賊DVD販売や動画共有サイトへの違法投稿というレベルではなく、P2Pファイル共有により、ほぼリアルタイムで全世界の放送番組や映画を、ボランティアによる字幕付け(いわゆるファンサブ)によって、放映やリリース直後から楽しめるようになっている中国では、中国政府が推進する国内コンテンツ産業の育成スピードは国民が求める品質需要に追いつけない状態が続いている。しかし、もし仮にその産業力が順調に生育するとしたら、アジア圏に密に張り巡らされた華人ネットワークを経由して、明らかに中国文化力は国境を溢れ出ることだろう。

 その勢いは、日本の「姿と戦略なき侵略」のように時間差を有したものではなく、リアルタイムでアジア諸国へ襲いかかる可能性が高く、それも国家戦略として行われることすら想定できる。「姿も、戦略もある」、しかしあくまで文化経済的な「侵略」をこそアジア諸国は恐れており、その衝撃を和らげる術を日本に求めている。

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