次世代ケータイインフラは世界規模で戦国時代に - (page 2)

クロサカタツヤ2009年02月17日 21時44分

 昨年のバルセロナには来ていないので定点観測はできないのだが、やはり携帯電話技術の総本山である欧州のイベントで、しかも状況が厳しさを増す中で、さすがのIntel軍団も肩身が狭いということだろうか。実際、ブースにいたエンジニアと思わしき若者から、「正直、技術に限界が…」という声が聞こえたのは、ここだけの話。

 以上をまとめると、イケイケのLTE、商売一直線のHSPA+、正念場を迎えたモバイルWiMAX、という構図が全体を通じて見えてきた。ただ、LTEはバブルの香りがするし、HSPA+はこれから本番を迎える新興国の3G普及とあいまって生臭い。正直、ここに日本企業が入っていくのは容易ではないな、という認識を改めて持った次第である。

ハイブリッド車が市場を席巻したように

NTTドコモブース NTTドコモブースは写真奥にLTEコーナーがあったが、FeliCaなどに埋もれて控えめな印象だ

 国内外のモバイル業界の方々と話をしていての私見なのだが、私は以前から、LTEは当面アドバルーンであり、目下の本命はHSPA+、と考えていた。あるいは前者が電気自動車、後者がハイブリッド車、というところで、次世代への「つなぎ」と思われていたバイブリッド車(HSPA+)が案外市場を席巻するのでは、と思っていた。

 今回のインフラに関する展示の傾向は、こうした私の仮説を補強するものとなった。もちろんLTEも研究開発は進むだろうが、市場化が見えるのは当分先だろうし、またその際も最初は先進国の都市部から、という感じがする(でなければ投資回収できないだろうし、バックホールも設計できない)。その意味で、当面はHSPA+の普及が進むように思えた。

 そしてこの領域で新興国のベンダー(特に中国勢)が元気だというのは大変興味深い。中国に関しては、今後の3Gインフラ投資は国が行うことになっている。いわば国をあげて3G/3.5G産業全体を育成しよう、ということだ。こうなると市場競争力のある中国ベンダーが世界市場の一大勢力として伸びてくる可能性は否定できない。

 おそらく欧州陣営は、そこまで読み切った上で、さらに技術の伸びしろがあるLTEに注力したいのだろう。プリウスに負けたGMやフォルクスワーゲンが、電気自動車で巻き返しを試みる、ということだ。ただこれはバックホールも含めてインフラを新たに設計しなければならない話だし、世界的な経済危機の中でかつてGSMのインフラを打った時のような大規模な投資を受けられるのかはまだ未知数でもある。

 こうなってくると、まだ世界に見えていない潜在技術も含め、いつどこでどんな下克上が起きてもおかしくない。今回のバルセロナは、インフラの世界が戦国時代に入ったことを告げる、そんなイベントのように私には思えた。

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