「電波は国民の共有資産であり、可能な限り有効利用するのが義務だ」――ソフトバンクモバイル代表取締役社長の孫正義氏は、同社がイー・モバイルから回線を借りてPC向けのモバイルデータ定額サービスを提供することに関して社団法人テレコムサービス協会 MVNO協議会から批判が出ていることを受け、このように反論した。
これは2月5日に開催されたソフトバンクの2009年3月期第3四半期決算の発表会の場で述べたものだ。
MVNO協議会は、周波数を割り当てられている通信事業者は他社の回線を借りるのではなく、自前で設備を構築すべきだと主張している。これに対し孫氏は、「通信事業者同士であっても、電波を有効利用できる方法が少しでもあるなら、それを実施することが義務を果たすことになる」と反論。電波の利用が阻害されることのほうが問題だとの見解を示した。
イー・モバイルと組む狙いについては、「事業だから競争しているが、目指すのは情報革命であり、新しいライフスタイルの提供だ。感情で競争しているわけではないので、理にかない、Win-Winのときは協業すべきだと考えている」と話す。
「イー・モバイルはネットワークをゼロから構築し、容量はあるけれども、損益分岐点に達するにはユーザーが足りない。一方、ソフトバンクモバイルは、顧客にPC用データカードの定額制サービスを提供したいけれども、トラフィックが増えるリスクが高く、ネットワークが一杯になってしまうのですぐにできないという問題があった。ここでWin-Win関係が構築できればいいと思った」(孫氏)
現在ソフトバンクモバイルでは、iPhoneなどのスマートフォン向けにデータ定額サービスを提供している。孫氏によれば、iPhoneユーザーのデータ利用量の平均は、一般の携帯電話ユーザーのおよそ10倍とのこと。PCを使った場合には、さらにデータ利用量が増えるだろうとした。
他社の回線を借りることで設備投資をしなくなるのではないかという懸念に対しては、「ボーダフォンを買収した時点で2万局程度しかなかった基地局を、5万局以上に増やした。また、1.5GHz帯を使った新たな通信サービス(第3.9世代携帯電話)にも設備投資していく」(孫氏)と一蹴した。
モバイルデータ定額サービスについては、UQコミュニケーションズがモバイルWiMAXを使ったサービスを2月26日より開始する。UQコミュニケーションズは他社にも積極的に回線を貸し出す方針で、ソフトバンクでも「今年7月くらいからMVNOを始めるかもしれないということで、一部テストを開始している。テストがうまくいき、条件がリーズナブルな価格であれば参入するだろう」(孫氏)とした。
このほか孫氏は、ソフトバンクがNTT東日本、NTT西日本と光ファイバー(FTTH)の販売代理店契約を結ぶことで交渉していることも認めた。「FTTHを自ら引きたいと努力したが、電柱1本ずつに許認可が必要で、手続きが非常に面倒。それであれば、家庭までのラストワンマイルはNTTのFTTHを使い、バックボーンはYahoo! BBを使うのがいいのではないかと考えた。NTTはFTTHの顧客獲得計画を若干下回っており、稼働率を上げる意味でもメリットがあるのではないか。現在最終調整中であり、一部の地域でテストを開始している」(孫氏)とのことだ。
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