個人や企業が組織などの壁を越えてつながるオープン型のネットワークと、その成功をテーマに対談を続けてきた今回の連載。最終回はこれまでの議論を踏まえながら、2008年後半に起きた米国発の金融危機がもたらした教訓について、デジタルガレージ創業者取締役の伊藤穰一氏と慶應義塾大学総合政策学部教授の國領二郎氏が語った。ここではそのダイジェストを紹介する。なお、対談の全編の内容はCNET Japanビデオにて紹介している。
伊藤氏は今回の金融危機は、「『ビジネスサクセス・イン・オープンネットワーク』ではなく、『ビジネスフェイラー(失敗)・イン・オープンネットワーク』だ」と語る。社会がオープンであっても、それだけでは成功への十分条件にはならないというのだ。
たとえば情報をたくさん公開していても、誰もがその金融商品のリスクを理解できていたわけではなかった。むしろ情報が多すぎると、何が重要なのかがわからなくなる。「ただ単にオープンだから良いというわけではなく、そこでの人の意識が重要だ」(伊藤氏)
情報を公開する側には、その受け手がきちんと理解できるようにしようという意識が必要だ。逆に、受け手にはその情報をきちんと把握し、相手が信頼できるかどうかを判断する力を持つことが求められる。「いくらオープンにされても、その意味を理解し、かつ的確な判断をするというところでしっかりした能力を持っていないと、オープンの良さが生きてこない」(國領氏)。つまり、この両者の意識と能力があってこそ、オープンモデルは成功するというのだ。
伊藤氏は「(世界金融が)クラッシュしたから『やっぱりオープンではダメだ』と捨ててしまっていはいけない。この環境下での成功の可能性を、オープンモデルで考えていく必要がある」と語る。オープンであることを否定するのではなく、不透明なモデルがいけないのだという発想が必要だとした。
國領氏も、「ネットワーク化されている環境の中で個人の力を引き出し、つなぎ合わせていくためには、ある種のオープンインターフェースがないといけない。閉じた世界の中では人間の力が生きてこず、押さえつけられたままになってしまう」とし、オープン性を担保しながら、個人の能力を引き出す方法を考えていくべきだと語った。全編の内容はCNET Japanビデオにて。
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