松下からパナソニックへ--第2の創業で3年ぶり安値から切り返すか

 松下電器産業は10月1日に社名を「パナソニック」に変更する。創業90周年を期して“第二の創業”と位置づけており、従来白物家電や住宅設備機器分野で使用されていた「ナショナル」もパナソニックブランドへと統一する。ところが、最近の同社の株価は、全体相場低迷の影響もあり、2000円台を大きく割り込み、先週の9月25日には一時、1894円まで売り込まれ、2005年9月以来約3年ぶりの安値水準に沈んでいる。果たして今回の社名変更が株価反転上昇のきっかけとなるのか。

 パナソニックはすでに、主にAV機器のブランド名として国内・海外で浸透しており、2003年には同社のグローバルブランドに位置づけられていた。今回の社名変更は、社名とグローバルブランドを一本化するとともに、国内ブランドも統一することで、パナソニックブランド自体の価値向上につなげるのが狙い。

 9月16日に開かれた白物家電の新製品説明会で同社の大坪文雄社長は「松下、パナソニック、ナショナルに分散した価値を結集する。日本国内で松下、ナショナルと呼ばれるときに消費者がイメージすることを、パナソニックで世界中の国々でも理解されるように取り組む」とブランド統一の狙いを明らかにした。確かに米コンサルティング会社、インターブランドの調べによると、パナソニックのブランド価値は2008年で78位。サムスン電子(21位)やソニー(25位)に大きく水を空けられているというのが現状だ。

 同社の課題は、海外売上比率の向上。2008年3月期の全売上高に占める海外比率は50%弱にとどまり、ソニーの83%(2008年3月期のエレクトロニクス部門)やサムスン電子の85%(2007年度)に比べ出遅れが目立つ。今期はBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)にベトナムを加えた5カ国で売上高を前年比25%増の5000億円以上に引き上げることを目標としている。

 しかし、地域別売上高で14%を占める米州は主力の米国市場が金融危機に直面する事態となり、米国はもちろん、欧州や中国など新興国でも景気後退は避けられない状況が想定され、同社の海外売上比率向上の計画が滑り出しから向かい風にさらされることになりそうだ。

 同社の2008年3月期の第1四半期(4〜6月)の連結決算は、日本を除く海外のすべての地域で2ケタの増収を達成し、営業利益は前年同期比48.2%増の1095億円を達成している。今後は9月中間期の連結決算発表時点で、2009年3月期通期の営業利益予想5600億円(前期比7.8%増)がどう修正されるかに注目が集まりそうだ。

 今後の同社の株価推移について外国証券のアナリストは「海外売上高比率を拡大するためのブランド統一は、長期的には有効な戦略。ただ、当面は米国の金融危機が深刻化するなかで、家電メーカーにとって海外売上高を伸ばすよりも国内需要をしっかり確保することが最重要課題となる。したがって、皮肉にもソニーなど海外売上高比率の高い企業に比べて、国内売上高比率の高い松下電器のほうが、業績の落ち込みが少なくて済むという結果になる可能性もある」としている。

 同社の株価は、2008年6月6日に2515円の年初来高値をつけて以来下落トレンドとなり、9月16日には2000円台を割り込み、25日には1900円台を一時下回った。連結PERは15倍水準にまで低下しており、過去の推移から判断しても株価自体が割安水準にあることは確か。今後の米国金融危機の状況に伴う全体相場の動向に左右される面は避けられないが、中長期的には株価は反転上昇トレンドに復帰する期待が持てそうだ。

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