前回の記事にて、モバイル広告市場の特徴をつかむための2つのポイントを挙げた。1つは広告の流通体系における特徴であり、そしてもう1つは通信事業者の市場におけるプレゼンスの大きさである。
この2つのポイントを踏まえてモバイル広告市場の流通体系について見ていく。
PCとモバイルの双方において、一般的なインターネット広告市場の流通体系は、おおむね以下の通りとなる。
インターネット広告流通のメインストリームは代理店、メディアレップを通してメディアへの広告出稿を行うというものである。その他に大きな流れとしては、オーバーチュアやグーグルに代表されるリスティング広告提供事業に集約される流通経路がある。その他にもいくつかの流通経路があるが、ここでは論旨から外れるため割愛する。
流通体系においてPC広告とモバイル広告の市場で大きくその特徴が分かれるのが、メディアレップとメディアの構造である。
以降では、それぞれの業態における特徴について述べる。
メディアレップとは、広告代理店とメディア媒体社との間を取り持ち、インターネット上に無数にあるメディアの広告商品を集積して、需要者サイドである広告代理店、ひいては広告主に効率よく、あるいは効果的に提供することが一意的な機能である。
PC広告市場を見ると、メディアレップは電通系列のサイバーコミュニケーションズ(cci)と、博報堂DYグループ、アサツーディ・ケイ系列のデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)、GMOインターネットグループで2008年7月にまぐクリックから社名変更したGMO アドパートナーズなど数社に集約されている。
メディアレップ大手2社の2007年度連結売上を見ると、cciは約518億円(2008年3月期)、DACは約387億円(2007年11月期)となっている。この売上のうちすべてが純粋なメディアレップ事業によるものではないが、両社のこの数百億円規模の売上は、それ以下の事業者を凌駕する売上規模であり、市場において大きなプレゼンスとなっている。
PC広告市場のメディアレップ業態は、このように、大手メディアレップ数社に集約される構造となっているのである。
一方のモバイル広告市場のメディアレップ業態は、大きく3つにグルーピングできる。
まずは上記に挙げたような、PC広告も取り扱うメディアレップである。そして、モバイル媒体に特化して広告商品を取り扱うモバイルメディアレップがある。
モバイルメディアレップとしての主な事業者は、サイバーエージェント系列で、NTTドコモ、電通ドットコム、cciも出資しているCAモバイル、モバイルユーザー動向を研究する調査研究所を持つ独立系のアップデイト、あるいはDAC系列のインタースパイアなどが挙げられる。
最後に、通信事業者が主体となり運営する公式ポータルサイトの広告商品を主に取り扱う通信事業者系列のキャリアレップがある。キャリアレップ各社は、公式サイトの企画、運営する役割も一部兼ねているが、メディアレップ業態としてみた場合の役割は広告商品の取扱い業務である。また特にディーツーコミュニケーションズ(D2C)は勝手サイトの広告商品も積極的に拡販している。
キャリアレップはモバイル広告市場を最も特徴付けているメディアレップ業態の一セグメントである。事業者は、NTTドコモのiモード公式サイトの広告商品を扱う、NTTドコモ、電通、NTTアドが出資するD2C、KDDI/auの公式サイトau oneポータルの広告商品を扱う、KDDI、大手総合代理店3社などが出資するmediba(メディーバ)がある。
以上のように、モバイル広告市場でのメディアレップ業態は事業者が3つにグルーピングできることが、まず1つの特徴である。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス