Windows Vistaの地デジ対応で見えた放送局のしたたかさ

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 マイクロソフトは、Windows Media Center TV Packを、PCメーカーに対して提供すると発表した。

 これは、Windows Vista Home Premiumおよび同Ultimateに搭載されているWindows Media Centerで、地上デジタル放送に対応させる機能を搭載したもの。今年5月に、ビル・ゲイツ会長が来日した際に、Vistaで地デジ対応を図ることが明らかにされたが、今回、正式に日本法人から製品として発表された。

マイクロソフト ビジネス&マーケティング担当の佐分利ユージン執行役常務 マイクロソフト ビジネス&マーケティング担当の佐分利ユージン執行役常務

 今年夏には開発が完了し、年末に向けてPCメーカー各社から、同Packを搭載した地デジ対応PCが発売されることになる。

 マイクロソフト ビジネス&マーケティング担当の佐分利ユージン執行役常務は、「これは日本の市場のために開発されたもの。これまでは、PCメーカー各社がWindowsの拡張機能を利用し、独自に地デジに対応してきたが、今回、Windows Vistaがネイティブで対応したことにより、ボリュームゾーンのPCにも地デジ機能が搭載できる」と語る。

Windows Vistaの地デジ機能に対応するPC・ハードウェアメーカー Windows Vistaの地デジ機能に対応するPC・ハードウェアメーカー

 現在、地デジチューナを搭載したPCは、搭載してないPCに比べて5万円程度割高となっている。この5万円の差が、地デジチューナ搭載PCの普及に足かせになっているというのがマイクロソフトの見解だ。

 実際、GfK Japanの調べによると、4月の地デジチューナ搭載PCの販売比率は21%。業界の目論見とは異なり、低迷を続けている。

 「ボリュームゾーンである15万円以下のPCにも、地デジチューナが搭載されるようになり、地デジ機能搭載PCの構成比拡大が期待できる」(同)というわけだ。

 薄型テレビ市場では、リビング向けの大画面テレビに注目が集まるが、こうした1台目のテレビに関しては、かなりデジタルテレビへの置き換えが進んでいる。2011年7月のアナログ放送停波までに課題とされているのは、むしろ個室などに置かれる、2台目、3台目のテレビのデジタル化。つまり、20インチ台以下のテレビの置き換えをいかにスムーズ進展させるかが課題なのだ。

 今回のVistaへの地デジ機能の搭載は、課題とされている個室のテレビのデジタル化を、PC業界が視野に入れることができるようになる転換点ともいえるわけだ。

 だが、同Pack搭載パソコンの発売を予定しているのは、エプソンダイレクト、ソーテック、富士通、マウスコンピューターの4社に留まっており、独自に地デジ対応してきたNEC、東芝などの主要メーカー、デルや日本HPなどの外資系が参加していない点も気になる。また、自作PCユーザーなどに提供されるといったプログラムが、現時点では用意されていないのも残念だ。

 マイクロソフトでは、「年末にかけて、搭載PCを発売するメーカーが増える可能性がある」(同社)としているが、対応メーカーを増やしていかない限り、影響力は限定的なものとなる。

フジテレビによるデモ。売り出し中のグループ「アイドリング!!!」が登壇し、PCでのテレビ視聴をアピール
フジテレビによるデモ。売り出し中のグループ「アイドリング!!!」が登壇し、PCでのテレビ視聴をアピール

 今回の発表はこれだけに留まらない。NHKのほか、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビの民放キー局が、ガジェットやサイト、データ放送と連動したサービスを開始することを明らかにした点も大きな動きといっていいだろう。

 今年のPC夏モデルでは、テレビ局各社が、標準でPCにガジェットを搭載するといった取り組みが行われたが、今回の会見で行われたデモストレーションでは、テレビ視聴とネットの連動を進展させていた。

日本テレビによる、野球放送中に選手のデータを表示するデモ 日本テレビによる、野球放送中に選手のデータを表示するデモ

 たとえば、日本テレビは、プロ野球の実況中継を見ながら、ネットで選手の詳細情報を閲覧できる機能をデモ。テレビ朝日では、ガジェットから直接ニュースの録画予約を行えるというな機能を実演してみせた。

 単に地デジをPCで視聴、録画するだけでなく、テレビ局が提供する各種サービスを利用することで、PCならではのテレビ視聴のスタイルが提案できる点で、各局の参加には意味がある。この点では、マイクロソフトの積極的な働きかけと、PCメーカーやテレビ局などが参加するWDLC(Windows Digital Lifestyle Consortium)の取り組み成果があったといえよう。

 テレビ局がここまでPCに積極的に関与するのは、地デジの視聴スタイルが、大画面テレビだけとは考えていない点が背景にある。

 テレビ局にとっては、ワンセグによるケータイやカーナビ、電卓も、視聴機会を増やすツールのひとつ。そして、PC利用によるテレビ視聴は、視聴機会を拡大させる切り札のひとつとなる。

 ある放送局関係者は次のように語る。

 「我々の興味は、2011年7月24日以降に、地デジを視聴できないという人がいないようにすること。そのためには、リビングの大画面テレビだけでなく、テレビケータイやPCで視聴してもらっても構わない。だからこそ、PCでの視聴の促進にも前向きに取り組んでいる」

 Vistaでの地デジ対応は、PC業界にとって、ビジネスチャンスを広げるとともに、放送局にとってもチャンスを広げることができるものといえよう。

 「PCでテレビ視聴」の発想は、PC業界よりも、むしろ、放送局の方が進んでいるかもしれない。

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