「あの悪魔のような施策」――ある大手モバイルコンテンツプロバイダの幹部は、NTTドコモの公式メニュー「iメニュー」における新しい広告をこう表現した。その広告とは、ドコモが新たに開始する公式コンテンツのメニューリストの掲載順位決定方式だ。
これまでドコモは、メニューリスト内の公式サイトを利用の多い順に並べていた。細かい計算方法については明らかにされていないが、基本的には「携帯電話だけで機能が完結するサービスについては、有料登録者数の多い順。PCサイトなど外部と連携する必要があるサービスについては、月間ユニークユーザー数の多い順」(NTTドコモ ネットサービス企画担当部長の前田義晃氏)というルールを定めている。
これを一部のカテゴリで入札制に移行する。ドコモが「プレミアムメニュー」と呼ぶこの広告枠は、第2階層と呼ばれる各カテゴリの最初のページに表示される。入札額の多い事業者ほど上位に表示される仕組みで、その枠数は各ジャンルごとに最大4件。入札は毎月1回行われ、ドコモの子会社であるディーツーコミュニケーションズが担当する。
当初6月23日より開始予定としていたが、システムトラブルにより開始日は延期された。ただし大きな方針に変更はないといい、1カ月ごとに入札が開かれ、表示順位が変わるようになる。
これまでコンテンツプロバイダーは、面白いサイトをつくって人を呼び込み、新しいコンテンツを頻繁に投入することでサイトの活性化とユーザーの解約防止を図ってきた。それがうまくいったサイトはランキングの上位になり、新たな利用者が入ってくるという循環が生まれていた。
しかし新制度では、ドコモにより多くの広告費を払ったコンテンツプロバイダーが、より有利な位置に表示されることになる。お金さえ払えばいいのか――冒頭の大手モバイルコンテンツプロバイダ幹部の発言には、こんな思いが込められている。
では、ドコモはなぜ、新しい方式を取り入れることにしたのか。前田氏は「コンテンツプロバイダーへ新たな機会を提供するため」と語る。
iモードは1999年にサービスを開始し、当初の2年間は参入順にサイトを並べていた。これは多くのコンテンツプロバイダーに早くiモード公式サイトを開設してもらうためだ。その後、表示順を現在の人気順に変更した。
「サイトの中身が充実し、質が上がることで利用者の満足も高まる、という好循環が生まれた」(前田氏)
しかし2008年にもなると、この制度ではコンテンツプロバイダーの要望に応えられなくなってきたと前田氏は言う。
「モバイルコンテンツ業界が飽和期に来ている一方で、参入企業は増え続けている。ランキング上位に表示される企業は変わっておらず、コンテンツプロバイダーの努力に対して提供される機会の量に不公平感が出ていた」
そこで、特にランキングの順位があまり変動していないとドコモが判断した10カテゴリについて、入札制を導入することにした。対象となるのは「メニューリスト」の中で、「働く/住む/学ぶ」「着うたフル」「着うた/着モーション」「着信メロディ/カラオケ」「メロディコール」「待受画面/フレーム」「ゲーム」「占い/診断」「コミック/書籍」「デコメール」の10種類。今後、「動画/ビデオクリップ」「きせかえツール」も対象となる見込みだ。
「サイトの数が多く、携帯電話内だけで完結するものを対象とした。要望には柔軟に対応するつもりで、ニーズがないところはやらない」(前田氏)
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