2008年4月、はてなが本社を京都に移転した。インターネットサービス開発のための人員を結集し、京都本社をものづくりの拠点とする計画だ。これまでHatena Inc.立ち上げのために米国で活動してきた代表取締役の近藤淳也氏も活動拠点を京都に移し、サービス開発に集中している。
今回の移転の背景には、海外で事業を立ち上げること、海をまたいだ複数拠点で会社組織を動かすことの難しさがあったというが、近藤氏は前向きだ。もともと10年ほど住んでいたという京都は、「新しいというよりも懐かしいという感じで、環境的にはやっぱり良い」と語る。
新生はてなは今後、京都からどのような価値を生み出していくのだろうか。近藤氏に聞いた。
うん。影響していますよ。集中できるという意味ではすごいできますし、こうしてお越しいただくか、僕たちが行かないと人と会えないという不便さはありますけど、だから逆に集中はできるので。
例えば東京で人と会っていると、みんなが同じこと言い出して、例えば「最近はモバイルだぜ」って誰かが言うと、とりあえずモバイルやらなきゃいけないみたいな(笑)。なんか圧力みたいなものを感じるんですよ。感じませんか? 「SNSだぞ」ってなると、「よし!」って猫も杓子もSNSを考えるような。
でもたぶん、本当は他にも可能性はあって、「いや僕はこれです」って思えないと、ユニークな物はなかなか作れないと思うんです。でも、あれだけ日々、会う人会う人から同じこと言われると、「やらなきゃいけないかな」って思ってしまうじゃないですか。
それは土地柄というか、人の量と情報の量だと思うんです。ある程度そういう波に乗っていくことは必要だと思うので、バランスだと思いますが、必ずしもそれだけではだめだろうと。特に新しいこと、ユニークなことをやろうと本気で思っているなら、やっぱりそこから距離を置く環境も必要、とは思ってます。
うん。だって新しい仕組みって“変”じゃないですか。いまは無いものなんですから。ある程度の集中度合いと時間をもっておかしなことを考え続けて、しかも、考え続けないと出てこないことだと思うので、毎日毎日それが分断されているような状況と、変なこと考えたら考えたで放っておいてくれる状況というのは全然違うと思うんです。
だから「それ面白いね」「自分もそれいいと思うよ」というポジティブなフィードバックが必要になってきます。基本的にぼくは、新しいものを作ることは“勘違い”だと思うんです。それが本当に次のスタンダードになるかどうかなんて、はっきり言って誰もわからない。だから、新しいものを作って世の中に出すことは、「これが絶対に成功すると思う」っていう勘違いをどれだけ強く実行できるかということだと思うんですね。
そうすると、あまり常識的な頭で、「それは他にもあるよ」とか、「昔誰かがやってたのと同じじゃないか」とか、そんなくだらないことでいちいち水をかけて、せっかく盛り上がり始めた芽を潰してたって仕方がなくて、基本的には「それすごいじゃん」って言って、ぐるぐるポジティブなフィードバックだけである程度信じきって走らないと、出るものも出てこないわけですよ。
まあ全員が全員それじゃ気持ち悪いんですけど。やっぱり、あまり人に会わなくて済む、あるいは放っておいてもらえるような環境というのは昔から考えてました。だから開発合宿とかもそういう考えからきてました。
僕と田中と(夫人の)令子さんと3人でシリコンバレーに行ってたわけですけど、当初の理想としては、現地で向こうの人を採用して、向こうで開発チームをまた新たに立ち上げて、英語のサービスを作って、向こうでヒットさせる、ということを考えてました。
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