「普通の会社なら、金を掘るためには埋蔵量の多い南アフリカに行きますよね。でも、はてなは今さら佐渡の金山に行くんです。ただし、Web APIによる自動化やユーザーによる膨大な情報、タグといった強力なツルハシを持って。それがはてなのビジネスです」
Web 2.0 EXPO初日の11月15日、はてな取締役副社長である川崎裕一氏が「10年間の現場から見た日本のウェブ」と題し講演を行った。冒頭は川崎氏がはてなの強みを一言で言い表した部分だ。その一端を担うサービスが「はてなブックマーク」である。
はてなブックマークは、ユーザーが気になる情報をブックマークしておく、いわゆるソーシャルブックマークと呼ばれるサービスだ。はてなブックマークが登場する前にもソーシャルブックマークは存在していたが、はてな社長の近藤淳也氏や川崎氏は、既存のソーシャルブックマークが今ひとつ面白くないと感じていた。そこで彼らが思いついたのが、電車の中吊り広告のように「今」をスパッと切ってみせること。それを編集コストをかけずに実現できないか。
このサービスでは、ユーザーが自由に「タグ」を付けて情報をブックマークしていく。そうやって付けられたタグをざっと見るだけで、大まかな内容もわかるし、注目されている記事が何なのかもわかる。さらに、同じタグを通じて別の人のブックマークを参照するなどして、どんどんつながっていく。
「ブックマークするという行為は完全に自分のためのものです。しかし、それが集約されるとみんなのためになるというのは、Web 2.0ならではの面白さでしょう」(川崎氏)
「はてなダイアリー」はブログサービスの一種だが、川崎氏によればユーザー同士が「つながる」仕組みを積極的に導入しているところが他と大きく異なるという。はてなダイアリーで記事を書くと、記事中の単語が自動的に「はてなダイアリーキーワード」にリンクされる。同じキーワードについて語っているユーザー同士につながりが生まれるのだ。
そのため、ブログを始めたばかりでもそこそこのアクセスが得られ、ブログを継続しようというモチベーションが高まるというメリットがある。また、特定のキーワードについての盛り上がりを時系列で見ることができ、商品の話題性を比較したり、話題になっている理由もすばやく把握できる。
最近サービスが開始された「はてなスター」は、人を褒めるための仕組みだという。
「日本人は人を褒めるのが下手だと思うんですよ。そこで、『読んだよ』という程度のシンプルなフィードバックができないかと考えて生まれたのが『はてなスター』です。いってみれば、mixiの「あしあと」をネットに公開するようなものですね」(川崎氏)
そして、こうしたサービス同士が強く連携し、それに魅力を感じる「濃い」ユーザーが多く集まっていることにはてなの強みがあるという。
登録ユーザーは約55万人と、他のブログ関連サービスに比べて飛び抜けて多いわけではない。しかし、月間のユニークユーザー数を登録ユーザー数で割ると、その値が他のサービスの倍以上にもなる。つまり、ユーザーに対する求心力が高いと、川崎氏はアピールした。
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