デザインから見るデジタルプロダクツ--第12回:三洋電機「Xacti DMX-CG9」デジタルムービーカメラ - (page 2)

インタビュー・文:山口優2008年04月18日 18時31分

社内アンケートや女性誌から“女性目線”を汲み取る

--基本スタイルを変えないまま、新しいデザインを生み出すのは大変ではありませんでしたか? どういったところで、従来モデルと差別化しようと考えられたのですか?

田島 メインターゲットとして女性や初心者を想定していたので、あまりメカニカルな感じにはしたくないと考えていました。そこでまず、外装に使用する素材を再検討することにしました。

 カメラのような光学機器は、アルミなどの金属を使ったものが多いですよね。しかし、CG9に関しては、あえてそうした素材を使わずに、持ったときにやさしい感じを与えるようなアクリルや樹脂などを使用することにしたのです。

 それから、「簡単」、「やさしい」というコンセプトに合わせて、ボタン類のレイアウトも見直しました。たとえば、写真撮影ボタンとムービー撮影ボタン、ズームスイッチを親指一本で操作できる位置にまとめて配置しています。同時に、爪の長い女性でも操作しやすいよう、ボタンを今までより少し大きめにしています。

 また、実際にカメラを使用する際は、ハードだけではなく、ソフトも重要です。そこで、メニュー画面もシンプルで機能が分かりやすいものに変更しています。

--そういったきめ細かな配慮をデザインに落とし込む際に、苦労されたことはありますか?

田島 デザインする際は、ユーザーの立場で開発中の製品を実際に使ってみながら方向性を決めていくのですが、自分だけではなかなか分からないこともあります。たとえば、今回の場合だと「ボタンの使いやすさ」がそうでした。

 そこで、社内のユーザー層に重なる女性社員に使ってもらって感想を聞き、形を決めていきました。爪の長い社員にも試してもらいましたよ。さすがに自分で付け爪して試すわけにはいきませんから(笑)。

塩路  そういえば、デザイン部署では、女性誌やファッション誌をたくさん買い込んでいましたね。しかも、それを部署内だけでなく休憩室にまで持ち込んで熱心に読んでいました(笑)。

田島 実際に、女性誌で使われるようなモチーフをデザインに取り入れています。たとえば、液晶背面にステレオマイク用の穴があるんですが、それは花柄をモチーフにしています。また机などに置いたとき底面になる部分に傷防止用の凸部があるのですが、それも同じ花柄になっています。

フラワーモチーフ 本体左右にデザインされているフラワーモチーフ。実は液晶裏部分(右)はステレオマイクが仕込まれており、本体裏部分(左)は机などに直接置いた時に本体にキズがつかないよう保護する突起の役割を担っている

 ただ、いくら女性誌を読んで女性の気持ちを理解しようとしても、男性である自分には、なかなか乗り越えられない部分があります。それをこちらの勝手な判断や決め付けで押し進めてしまわないように気をつけました。

塩路  いろんな人の意見を聞く、というのがXactiシリーズの開発の特徴的なところでもあります。今回のCG9でも、かなりの人数にアンケートを実施したりして、意見を集めていましたね。

田島  デザイン画を何種類か用意し、50名以上の女性社員からそれに対する客観的な意見を集めました。それに基づき、ラインアップで展開する色のパターンなどを詰めていきました。オプションの専用ケースも、「女性のこだわり」がかなり反映されたものに仕上がっていますよ。

デザイン画
デザイン画 こうしたデザイン画を経て、1つずつ商品デザインができあがっていく。ボタンを大きく、小さなボディで、といった製品コンセプトは、初期の段階で決定づけられていたもの

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