IT業界に興味を持つ現役学生の生の声を取り上げる学生座談会。第3回目となる今回は、「技術+アルファ」というテーマを軸に開催された。
「ライブドアショック」を頂点に、「IT起業家=拝金主義者」との認識で世間から批判を受けたIT関連企業各社は、自社の技術力の高さを訴求する傾向にある。しかし、一方では未だに「技術力のある企業が存在しない」「いい技術者がいない」などの批判を受けることが多い。
技術についての議論も重要だが、「今の日本のIT関連ベンチャーにとって本当に必要なのは技術だけなのか」という見方もある。「何をもっていい技術であるか」については前回の座談会を参考にしてもらいたいが、今回はIT関連企業やその経営者、技術者にとって、技術以外で重要なことについて議論してもらった。
佐俣:司会の佐俣アンリです。僕はITを軸に起業家、ベンチャーキャピタルの人と生態系に興味を持ってさまざまな活動をしているのですが、学生座談会もその一環として実施しており、今回が3回目となります。
やはり、比較的若い人が働いているIT関連企業と言えども、学生の視点からでなくては見えてこないものというのはたくさんあると思っています。そのため、これまで「起業」「技術」という2つのテーマを取り上げてきましたが、今回は「技術+アルファ」をテーマとして皆さんの意見を伺っていきたいと思います。
それではまず、渡邊さん。基本的にみなさんはバリバリのエンジニアというわけではないのですが、それでもITを軸にさまざまな活動をされていますよね。ITの魅力というのは一言で言ってしまうと何なのでしょうか。
渡邊氏:ITの魅力は、何でもありってところですね。例えば、自分の中で「こんなことができたら便利だよね」というひらめきがあったとき、ITを活用すれば「じゃあやってみよう!」とすぐに行動に移すことができる。ITは僕にとって技術というより、自分自身の限界を超えるための存在なんです。
ですから、ITを使って何かを作れば作るほど、自分が見えてくる。だから、ITは技術オンリーじゃないというのが僕のITに対する認識であり、そこが魅力的なところです。この座談会のテーマは、「技術+アルファ」とのことですが、まさしく技術よりも「+アルファ」の方が重要だという気がします。
田尻氏:僕は電子機器や新しいものが大好きで、大学も電気系に進んだんですけど、僕らの世代なんかはインターネットが日常生活の中に普通にある時代で育ってきました。だから、ネット関連の技術については、すでにあるインフラとしてしか考えていないんですよ。
でも、情報通信関連技術と言えば電話しかなかった時代に生まれ育った50〜60代の人にとっては、技術は特別なものとして捉えている人が多いんですよね。そこに、僕らの世代と年配の方々とのITに対する認識のズレを感じます。馬車と車の時代の人と話すような感じなんです。
佐俣:みなさんの意見だと、技術というのは、画家でいうところの筆。やりたいことに使えれば十分と捉えることができますね。「筆をどうカッコよくするか」「すごい筆ができた」という議論ではなく。
碇氏:そうですね。技術は能力を拡張するもの、理解する増幅器だと思います。ITって、コミュニケーションの形を変えたでしょう?世界中の人とつながるためのコストを低くしたわけですから。
私は、ネットで作品を見てくれた人とオフ会で直接会って、人がPCの向こう側にいることを実感しました。友達に見せる感覚で、世界中に見せられるというのは、すごいことだと思います。
私が作った「マイアヒ」はフランスやイタリア、他にも読めない言語のサイトで紹介されたんです。言語を越えて伝わるってすごい衝撃でした。やってみようかなという小さな行動が、大きな可能性にたどり着いたわけです。以前は自分が何かやっても世の中変わらないという意識があったんですけど、ちゃんと世界に影響することが見えたのは大きな収穫でした。
このような経験から、ITは技術が中心でなく、事象を説明するのに便利なツールだと実感しています。
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