2006年1月公開の個性派RSSリーダー「feedpath Rabbit」が4月30日にサービスを終了する。運営会社のフィードパスが4月1日に明らかにした。もちろん、これはエイプリルフールネタではない。
feedpath Rabbitを使っている人は4月29日までに登録しているRSSフィードをOPML形式で書き出し、他のフィードリーダーに移行する必要がある。移行手順はこちら。
feedpath Rabbit(サービス開始当初はfeedpath)は、Ajaxを多用したインターフェースとブログ投稿も可能なエディターを備えた点が特徴で、ネットユーザーの間で話題となった。それがなぜ閉鎖することになってしまったのだろうか。
その裏側について、フィードパス代表取締役社長 CEOの津幡靖久氏、同社取締役 兼 CTOの後藤康成氏、そしてfeedpath Rabbitのもう一人の産みの親にも話を聞いた。元フィードパス COOで、現在はモディファイ CEOを務める小川浩氏だ。
津幡氏:約5万人です。RSSリーダーというサービス自体はうち特有のものではないため、RSSリーダーにプラスして、ブログエディターで複数ブログに投稿できるなど、オリジナリティのあるサービスを展開していたので、今回の閉鎖の発表はそれなりに影響があると認識しています。
基本的な考え方としては、昨年来、当社の方向としてSaaSに力を入れていく中で、「できればBtoBもBtoCもできたらいいよね」というのは正直言ってなくはないのですが、20人くらいのリソースでやってますし、ようやくSaaSの方もマーケットとしていける段階にきました。
SaaSにエンジニアリングも含めてリソースもかかるようになってきたというのもあるので、思い切って、どちらにプライオリティを置いて事業を推進していくか、踏ん切りをつけたというところですね。
feedpath Rabbitのようなコンシューマー向けのメディアみたいなサービスは、正直言うとすごく大きく伸びる可能性もあります。mixiとかFacebookとかありますけど、ただ、やはりそこに至る過程にはリスクがまだ大きいというのはあります。さきほど申し上げたように5万人くらいのものでメディア化しても収益化は難しいところはありますので、であればそこにリソースを取って分散していくよりは、サービスを閉じてSaaSの基盤をしっかりと作り上げていこうというのが趣旨です。
津幡氏:まだ正直申し上げて収支的に急成長という感じではないんですけど、お客さんが増えてきましたし、引き合いもだいぶ増えてきました。案件的にも、100人、200人規模の会社さんでサイボウズも使うし、企業向けメールホスティングサービス「feedpath Zebra」も使うようになってきた。それでSaaSならではのスケジュール連携を利用するという案件が増えてきています。
メールに関しても逆にお客様からいろいろ要望をいただきながら、我々も勉強させていただきながらやれるサイクルに徐々になってきていますので、そこはリソースをぐっと入れてやっていくタイミングだろうと感じていますね。
津幡氏:正直言ってそれはありますね。単独のRSSリーダーだけでは厳しいと感じています。例えばポータルサイトやブラウザの付加機能というところでは十分成立すると思うんですけど、我々はあえてそこをチャレンジングに、RSSリーダーをトリガーとしたメディア展開という切り口を狙っていました。もちろんまったく広告がつかないということではないんですが、やはり本格的に会社のコアビジネスにしていくにはちょっと細いかなというのを、この2年くらい感じていました。
後藤氏:RSSリーダーって非常にたくさんあるじゃないですか、そのなかで一番の競合はブラウザなんですよ。ブラウザについているフィードリーダー。実際、他のRSSリーダーを見てみても、「livedoor Reader」でもたかだか17万ユーザーしかなかったり、Fastladderはオープンソース化したりなど、あまりにもツールとして使われすぎていて、単体だけでビジネスにするには難しそうだなという印象でした。
例えばライブドアならばライブドアブログがあって、そこでのトラフィックを誘導するようなスキームがあるじゃないですか。そういった多くのサービスプロバイダあるいはソーシャルネットワークに対抗してやっていくには相当のコスト、エンジニアリングが必要になるだろうと。
では我々の事業ポートフォリオのなかで何を優先すべきかというと、津幡が申し上げたようにSaaSが伸びているんですよね。この波に乗っていかないと、それこそまずいということで、そちらを選択しました。ですので、決してネガティブな状況であったわけではなくて、あくまで僕らの持っている能力を最大限に活かすための選択だったといったところですね。
津幡氏:とはいえ、ソースコードを完全に捨ててしまうわけではないので、それを元に作り直して、企業向けのSaaSに活かしていくことは十分ありますね。
流れとしては、ネットサービス的なものが企業向けにも使われてきている。イントラだけでなくて、インターネットのネットワークの中で。そういう意味では我々は、変な言い方ですが、いい勉強をさせてもらったなと思っています。エンジニアやネットワークの運用など、そういったノウハウは中長期的に活かしていきたいですね。社内的にはエンジニアに「feedpathのことはすべて忘れろ」と言っているわけではなくて、逆に今までの経験を活かして新しいサービスをもう一度考えていこうとしています。
小川氏:「やはり」という思いと「残念」という思いが交錯しました。やはりというのは、そもそもフィードパスを去ることになった最大の理由が、フィードパスがfeedpath Zebra、ブログエンジン、feedpath Rabbitという3つものラインを抱えねばならなくなった、親会社や出資者との政治的事情に、ベンチャーとしてのフォーカスが失われていくだろうと思ったからです。
最近のフィードパスは、さらにサイボウズOFFICEのASPも始めており、コンシューマー向けのfeedpathへの開発リソースが減らされていくことは目に見えていました。そのように予測はしながらも、実際に撤退となると非常に寂しいものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」