コミュニティの深化かコマースの窓口か--真価問われる仮想世界の可能性

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 3月17日、東京中小企業投資育成の主催によるセミナー「SPICE Forum:業界の先駆者が語るメタバースビジネスの可能性」が開催された。

 セミナーの第2部では、仮想世界サービス「meet-me」を運営するココア代表取締役の森山雅勝氏をはじめ、ファッションコミュニティー「StyleWalker」を運営するスタイルウォーカー取締役の石倉正啓氏、2度に渡りSecond Lifeの調査レポートを発表しているみずほコーポレート銀行産業調査部の山口勝氏、エイタロウソフト代表取締役の西島栄太郎氏、東京中小企業投資育成の創業期支援第二部長の田中保行氏らによるパネルディスカッションが開催された。なお、コーディネーターは博報堂DYメディアパートナーズメディアプロデューサーの相川雅紀氏が務めた。

左から博報堂DYメディアパートナーズメディアプロデューサーの相川雅紀氏、東京中小企業投資育成の創業期支援第二部長の田中保行氏、ココア代表取締役の森山雅勝氏 左から博報堂DYメディアパートナーズメディアプロデューサーの相川雅紀氏、東京中小企業投資育成の創業期支援第二部長の田中保行氏、ココア代表取締役の森山雅勝氏

 今回のパネルディスカッションは、東京中小企業投資育成に寄せられたメタバースビジネスに関する質問をもとに進められたが、まず注目されたのは、メタバース(仮想世界)と収益についての関係だ。

 仮想世界サービスでは、仮想通貨やアイテム課金、広告といったビジネスモデルがあるが、アイテム課金の場合、「サービス開始当初から利用しているユーザーと、3カ月後に利用を開始したユーザーで所有するアイテムに格差ができてしまい、それが原因で利用をやめてしまうユーザーが多いのだという。

 これについて森山氏は「この格差を解消するユニークな仕掛けが必要」と説明する。森山氏が手がけるmeet-meでは、制作者側の仕掛けに重点を置いていることをサービス開始時よりうたっている。また、山口氏からは「事業者は、簡単に入って簡単に遊べる、使いやすいサービスを提供すべき」という意見もあがった。

スタイルウォーカー取締役の石倉正啓氏、エイタロウソフト代表取締役の西島栄太郎氏、みずほコーポレート銀行産業調査部の山口勝氏 左からスタイルウォーカー取締役の石倉正啓氏、エイタロウソフト代表取締役の西島栄太郎氏、みずほコーポレート銀行産業調査部の山口勝氏

 また、日本ではすでにPC以上に欠かせないデバイスともなっている携帯電話だが、これについて、石倉氏は「携帯電話ユーザーは、ケータイコンテンツを『ながらメディア』として利用している。テレビを見ながら、通勤しながら、最近ではお風呂に入りながらショッピングなどをしている」と利用度合いの深化を語る。また、山口氏からは「米国では2Dのカジュアルゲームが中心で、3Dコンテンツはまだ少数。欧州でも壁紙などの利用が中心となっており、日本の3Dコンテンツ市場は注目されている」と説明する。

 携帯電話向けの仮想世界サービス「Lamity」を手がけるエイタロウソフトの西島氏は「携帯電話サービスを主軸としているが、パソコン向けサービスに比べてアイテム課金の収益性の高さは実感している」と説明。さらに、任天堂の家庭用ゲーム機Wiiで利用できるアバター「Mii」を例に挙げ、「アバターを個人識別に活用するケースは携帯電話向けサービスでも増えていくと思う」として、モバイルでのビジネスの可能性に期待を見せた。

 現在の仮想世界サービスの先駆けとも言える米Linden Labの「Second Life」だが、現在では新規加入者が減少しつつある。この状況について、森山氏は「Second Lifeは米国より日本の方がフィーバーしている。3Dインターフェースに対する需要は減っていないので、営業をがんばって乗り切れば将来性はある」と語る。

 また、石倉氏は仮想世界サービスがコミュニティー要素が強いことを改めて説明。「リアルとバーチャルの接点としてユーザーが滞在する場所になっているため、敷居が低ければ利用者は増える。そのためにビジネスパートナーは必要」と語った。

 西島氏は仮想世界サービスのありかたについて、「今後、仮想空間はソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の延長という位置づけになっていくと思う」と語る。「SNSで知り合った人たちが、リアルで会うのではなく趣味に合った内容のメタバースで会うといった、SNSとの橋渡しになるのでは」(西島氏)。山口氏もこれにあわせて「メタバースをリアルとバーチャルの橋渡しにするという動きは高まっており、SNSの機能拡張として提供される可能性が高い」と示唆した。

 パネルディスカッションの最後には、「既存ビジネスにとってのメタバース利用について」というテーマが掲げられた。これについて森山氏は「今までよりも深いコミュニケーションが可能になる。これは企業とユーザーの関係においても同じ」とコミュニケーション機能としての進化に期待する。

 一方、石倉氏は「女性向けのビジネスを提案してきたが、口コミの伝播力をインターネットに持ち込んだことが良かったと思っている。今後マスコミュニケーションでなくコミュニティーコミュニケーションに移行していく上で、横のつながりが強いメタバースは情報収集にも有効。新しいプロモーション手法を模索していきたい」とマーケティング、プロモーションの観点での可能性を語った。

 西島氏は「メタバースは、1つの商品を複数のユーザーが見て意見を交換できる。この点でECとメタバースは相性がいい。複数のユーザーがコンテンツを共有するような、従来とは違うEコマースが出てくるのでは」と、コマースのための窓口としてのあり方を提案した。これに加えて山口氏も「Eコマースは出かける必要はないが、商品説明が乏しい。この部分をメタバースなら解決できると思う」と語った。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加