オンラインゲームとコミュニティサービスのカンファレンス「OGC 2008」が3月14日、東京・千代田区のベルサール神田で開催。GLOCOM仮想世界研究会に所属する山口浩氏と鈴木健氏が、人気アニメ「電脳コイル」を題材に、最新技術オーギュメント・リアリティ(AR)についての講演を行った。
2007年にNHK教育テレビで放送された、磯光雄氏原作による人気アニメーション「電脳コイル」。この作品の世界では、「電脳メガネ」と呼ばれるメガネ型のコンピュータが普及し、街中に溢れるバーチャルな情報が現実世界に重ねて表示される。まさに現代の最新技術であるオーギュメント・リアリティが高度に実現した世界が描かれているが、両氏はこれを夢物語ではないと指摘する。
「物語は現実の世界に影響を与えることがある」とし、「1921年に発表されたチェコの作家カレル・チャペックによる戯曲「ロッサム万能ロボット会社」に始まり、1981年の映画「ターミネーター」など、未来の技術を描いた作品は、技術者にイメージとモチベーションを与え続けてきた」(山口氏)というのがその理由だ。
事実、1992年にアメリカのSF作家ニール・スティーヴンスンが発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」で描かれた3D仮想空間“メタヴァース”は、Second Lifeに代表されるバーチャルスペースの登場により実現している。
山口氏は、こうした仮想世界サービスについて、「通信をよりリッチな環境で行う」「ゲームをよりリアルにする」「映画をインタラクティブなものにする」という3つの流れから生まれたものであると解説し、そのポイントは「現実から離れたところに存在する世界である」ことだとする。それに対してオーギュメントリアリティの世界は、「メガネをかければ、いまここにある世界としてとらえられる」という。
実際の研究成果の例として両氏は、動画共有サイトYouTubeで大きな話題となっている「Parallel Tracking and Mapping for Small AR Worspaces - extra」を披露した。オックスフォード大学のアクションビジョン・ラボラトリーにより製作されたこの動画には、カメラで撮影した動画上に、リアルタイムにバーチャル空間を再生する様子が収められている。
山口氏は、「コンピュータが映像上の目印となる特徴点を認識しているため、カメラの位置を動かしても、再生された空間がまるでその場に存在するように見える」と解説する。また、先ごろオリンパスと中央大学の共同実験が行われた、歩いているユーザーの状態に合わせて情報を配信する眼鏡型ディスプレイ「モバイルEye-Trek」の例を挙げ、「ARはバーチャルリアリティの分野でも特に注目を浴びており、論文も次々と発表されているなど、急速に研究が進んでいる」とした。
お詫び:本文中、鈴木氏と山口氏の発言と話者が逆になっておりました。お詫びして訂正いたします。
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