2008年最初のIPO、ネットイヤーへの市場評価はいかに

 3月6日、インターネットサイト制作、モバイルソリューションなどを手がけるネットイヤーグループが東証マザーズ市場に新規上場(IPO)する。IPOマーケットは2008年に入り低迷。株式市場ではネットイヤーグループにIPOマーケット、また新興市場の救世主として期待する声が高まっている。

期待の2月なのに4勝5敗

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 IPOは2006年まで、特殊な案件を除いて初値は公開価格を上回るのが当然。いわゆる“ベンチャー色”のある案件なら初値比2倍以上が珍しくはなかった。しかし、2007年から「IPOならどれでも」という流れが変わり、初値が公開価格を割り込む銘柄が目立つようになってきた。

 それでも、2007年に公開価格を割り込んだ案件は、市場からの吸収金額が大きく成長性の乏しい成熟企業や地方市場上場企業などが中心だった。それが2008年に入り、マーケット環境はさらに悪化。第1号案件のデジタルハーツ(2月1日、マザーズ上場)こそ公開価格比2.3倍の高初値を付けたものの、その後は4連敗となった。

 例年、1月はブックビルディングのスケジュールなどに正月休みが入ることを嫌い、IPOのない空白期となる。正月休み中に蓄積されたエネルギーにより、2月のIPOマーケットは、驚異的なパフォーマンスが得られることで知られている。

 だが、2月は29日に上場したセブン銀行など2社が公開価格を上回ってスタートしたものの、月間の成績は4勝5敗と負け越し。IPOマーケットは投資マインドが反映されやすいだけに、新興市場全般への悪影響も懸念されていた。

「旬を過ぎたビジネスモデル」

 ネットイヤーグループは1993年に電通国際情報サービスの米国におけるマルチメディア&インタラクティブメディア部門としての活動を経て、1999年7月に日本で設立されたネット系ベンチャー。業界での知名度は高く、株式市場でも上場予備軍として折に触れて名前が挙がる存在だった。2007年3月期9月中間ベースの資本金は4億2325万円、株主資本は16億3196万円。今3月期は連結売上高32億9600万円(前期比30%増)、経常利益は3億200万円(同27%増)を計画している。

 主力はサイト制作で、コンサルティングまでを一括して請け負うビジネスモデルが特徴であり、強み。モバイル系子会社の将来性は評価されているが、株式市場の一部では「旬を過ぎたビジネスモデル」との厳しい声も聞かれる。

 既上場でネットイヤーグループと業態が似ている大証ヘラクレス上場のアイ・エム・ジェイは、新興市場のネット株物色の主流に乗れず、株価は実質上場来安値圏で停滞する。今3月期は決算期変更による変則6ヶ月決算で比較しづらいが、実質ベースのPERは20倍程度。会社の資産価値から株価の水準をはかるPBR(1株当たり純資産倍率)は0.58倍。株式市場では企業が倒産した際に資産総額からすべての負債を支払った後に残った資産となる「解散価値」を大幅に下回る水準でしか評価されていない。

 しかし、IPOマーケットは超大型案件のセブン銀行の上場を経て、改善の色が強まってきている。ネットイヤーグループの実態面を評価する声は多くないが、2008年初めてのネット系ベンチャー企業の株式公開とあって初値は公開価格を大幅に上回るとみられている。

後に続く銘柄のけん引となれるか

 ネットイヤーグループの市場からの吸収金額は4億円弱。523億円あったセブン銀行と比べるまでもないが、マザーズ上場案件としてもかなり少ない部類に入る。ベンチャーキャピタル保有株を考慮しても、上場初日は需給面主導の展開が想定されている。ネットイヤーグループの公開価格は3万2000円。公開価格比2倍はもちろん、市場では「10万円を意識した展開も考えられる」との声も聞かれている。

 日本版SOX法施行による経費負担増、上場審査の厳格化を背景に2008年のIPO銘柄数は大幅な減少が見込まれている。ベンチャー企業だけでなく、株券電子化を控え、大企業にとっても株式公開しづらい年と言える。IPOはスケジュールが混み合うほど盛り上がる傾向があるだけに、厳しい1年になると予測されており、実際に厳しいスタートとなっている。

 背景はどうあれ、ネットイヤーグループが記録的な発進となれば、後に続く銘柄にも初値買い意欲が高まっていくことが予測される。3月以降のIPO市場を占う意味でも、ネットイヤーグループへの株式市場の注目度は日増しに高まっている。

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