こうした人材に対するきめ細かな姿勢は、同社特有の社内制度にも表れている。なかでもユニークなのが、社長立候補制度だ。入社時、社員には、各自の人生設計や夢を記入する『夢手帳☆熊谷式』(代表取締役会長兼社長の熊谷正寿氏考案の手帳で、市販もされている)が配られる。新規事業を提案したい社員は、事業計画とともに、この『夢手帳』を提出。入社半年以上が経過していて、力さえあれば、社歴やポジションは問われない。『夢手帳』の記載内容も、役員会で審査され、新規事業立ち上げ可否の判断材料となる、というものだ。
この制度の根底には、率先して挙手した社員に仕事を任せる=自己責任意識を高め、責任のある仕事を通じて、成長の機会を提供するという考え方だけでなく、「社員ひとりひとりに夢を実現してもらいたい」という、熊谷氏の願いが込められているという。また、信賞必罰を徹底する一方で、降格の翌日からまたチャンスがあるという、敗者復活制度を明確に謳っているのも、こうした願いに沿ったものといえよう。
さらに、IT業界では軽視されがちな福利厚生も、大手企業と比べても遜色ない手厚さだ。特に育児支援制度に関しては、昨年10月に大幅な拡充がはかられている。同時に、永年勤続表彰制度も明確にルール化され、昨年12月には表彰式も行われた。社長室 グループ広報チーム 細田暁貴氏はいう。
「育児支援制度の休養期間は長く、短時間勤務についても、部署と本人で合意すればいくらでも短くできます。また、配偶者の両親が疾病・負傷した場合でも看護休暇を取得できますし、お子さんの学校行事で休暇を取得できるのも、他社ではあまり見られないものです。動きの激しい業界にもかかわらず、インターネットが世に出始めた頃に入社した社員が多く残っているのも、そうした働きやすい環境を整備していく会社の姿勢に一因があると思います」
金融事業からの撤退を踏まえ、同社は今年、「インターネットリバイバル」をテーマに掲げ、経営の主軸たるネットインフラ、ネットメディア事業に立ち戻り、そこに全ての経営資源を注入する方針だ。特に、シェアNO.1を誇るドメイン事業やカード決済事業のより一層の強化と、ネットメディアの拡充をメインに据える。同社が1998年にグループ社員に向けて表明した「55ヶ年計画」によれば、2051年には、グループ全体で207社、うち27社が上場する予定だ。それが実現するか否かは、同社の持つ高い技術力と、独自の社内制度が鍵となりそうだ。
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