「アジアとケータイを制した者が、世界のインターネットを制するだろう」--ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は2月7日、同社の中長期ビジョンについてこのように述べ、携帯電話市場に進出しつつあるGoogleへの対抗心をあらわにした。
Googleは検索市場において、ソフトバンク子会社のヤフーの競合企業にあたる。ただしGoogleは近年、携帯電話市場への強い意欲を見せている。2007年11月には携帯電話向けプラットフォーム「Android」を公開したほか、米国では700MHz帯のオークションに参加し、携帯電話用の周波数を取得する動きを見せている。日本国内でもauに続いて、国内最大手の携帯電話事業者であるNTTドコモとの包括提携を1月に発表。Googleにとって日本市場は携帯電話サービスを開発するための重要な市場であると明言している。
一方のソフトバンクは、ADSL事業や携帯電話事業などに進出して規模を拡大しているが、最終的に目指すのは世界ナンバーワンのインターネット企業だ。必然的に、両社はぶつかりあうことになる。
「我々の中長期の経営戦略において、携帯電話はあくまでもインターネットマシン。Googleが今後5年から10年の事業展開において、重要な注視すべき相手になってくるだろうと、正直ベースで思っている。そこを戦うためには、アジアをしっかりと守っていく。アジアを守ることが、世界一への一番の近道かもしれない」
孫氏は、今後インターネット市場が大きく伸びる分野は中国を中心としたアジア圏と、携帯電話市場の2つと見る。アジア圏については、中国のEC最大手であるアリババグループに出資するなど、着実に足場を築いている。また、アジアの検索市場においてGoogleの地位が欧米ほど高くないという点もソフトバンクにとっては好材料だ。日本ではYahoo! JAPAN、中国では百度、韓国ではNaverの人気が高い。これらの企業と友好関係を結び、「アジアの文化やコンテンツを十分理解して、先手を打っていく。すでにいくつか施策はとっているが、これを一気に強化する」
携帯電話市場については、「ユーザー数でも、利用頻度でも、利用シーン(の多彩さ)でも、PCをはるかに上回る」とし、大きな潜在力があると話す。データサービスの進んだ日本でサービス展開することで、「ほかのインターネット企業のどこよりも先に、携帯電話への土地勘を得つつある」と自信を見せる。
「これまで携帯電話がインターネットマシンになり得なかった理由は3つ。(1)通信速度が遅すぎた、(2)画面サイズが小さすぎた、(3)CPUの速度が遅すぎた。これらの3つが真っ先にクリアされるのが日本だ。端末だけならばほかの国でも可能だが、(下り最大3.6Mbpsの)HSDPA並みの通信速度で、全国にサービスを提供するとなると、欧米でもアジアでも難しい」
孫氏は今年、上記の問題がすべて解消し、「2008年は携帯電話のインターネットマシン化元年になる」と宣言した。
Googleとの戦いについては、すぐに決着がつくと孫氏は考えていない。「(各事業)単品では勝負はつかない。最後は総力戦になるだろう」
なお、米国でMicrosoftがYahooに買収提案をしている問題については、「(孫氏とYahoo! CEOのJerry Yang氏の間で)これからさまざまなコミュニケーションがなされるだろう。ディスカッションは始まったばかりだ。それ以上のことはお話しできない」と述べるにとどめた。
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