情報通信政策フォーラム(ICPF)は1月31日、東京都文京区の東洋大学構内で第24回のフォーラムを開催した。今回のテーマは「放送・通信の総合的な法体系に対する通信事業者の考え方」。ソフトバンクBB取締役常務執行役員兼CSの筒井多圭志氏が講師を務め、現行法制および新情報通信法の課題点と通信事業者側から見た「改正希望案」などについて持論を展開した。
筒井氏は、新情報通信法のポイントとして論議されている「レイヤー型構造」について「国民生活に大きな影響を与えるようなインフラ事業分野において自然独占を契機とする不当な超過利潤を放置しないための規制である、という根本法理が忘れ去られる傾向にある」と指摘。レイヤー型構造化を「コスメティックな美の追求」とし、個人的には強い興味をひかれるテーマではないとした。
また、産業組織論的な観点から、独占禁止法2条7(独占的状態の定義を示す内容)を補完する必要性を強調。その上で、改正談義で取り上げるべきテーマとして「放送局開設の根本的基準」「特定無線局開設の根本的基準」「放送局・特定無線局の割当指針」を提示、特定事業者以外にとって参入障壁の高い仕組みを緩和すべきとの見解を示した。
具体的にはFTTH市場について例を挙げ、「接続事業者としては、スコップ代や弁当代を払ったら水を飲む状態となる、というようにルールを設定してもらいさえすれば是非参入したい」(筒井氏)と説明する。 1つの回線を分岐し複数の戸建で共有するシェアドアクセス方式は戸建向けのFTTHサービスとして一般的だが、NTT東西ではこれを1分岐でなく、最小でも8分岐単位で設備を貸出している。そのためFTTH市場が参入障壁の高い、市場競争原理にもとるものと指摘した。
また、これに関する総務省の告示(第243号別紙2)が市場調達可能性、他事業者による同様サービスの提供可否をベースに「ボトルネック性はない」と判断したことについて、「たとえば『月に行って事業をする』と望んだ事業者に対し、『ロケットは市場で買える。買うお金がないのは企業努力が足りない』と断じているような回答だ」と反論。市場公平性を踏まえてガイドライン化し、同判断を廃止すべきと主張した。
しかしこの筒井氏の主張に対し、会場からは「(FTTHの設備開放範囲を)8分岐から1分岐にせよ、というのは総務省含め行政判断の域を超えているのでは」など厳しい声も挙がった。筒井氏は「専門家による勉強会などの結果を踏まえた上で判断する、というのであれば納得できるが、そうした活動が見られずに(レイヤー型構造のような)全面的法改正の部分のみに話題が集まっていることに疑問を感じる」とし、今後も通信事業者の立場から「現行法制の課題と法改正への要望」を提示していくとした。
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