「2010年から先の10年間を考えたときに、光ファイバーが最も効率的な技術かと考えると疑問がある」--竹中平蔵総務大臣の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」の座長を務める東洋大学教授の松原聡氏は2月22日、情報通信政策フォーラム主催のシンポジウム「通信と放送の融合:その真の姿を求めて」において講演し、ソフトバンクが提案する光ファイバー専業会社の設立案に異議を唱えた。
ソフトバンクは現在、総務相が開催している「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会」において、NTT東日本、西日本が保有する光ファイバーの回線事業を切り離し、すべての通信会社に1社独占で光ファイバー網を提供する民間企業を設立するべきだと提案している。ソフトバンクの試算によれば、この会社が設立され、5年間で6000万回線を敷設した場合、光ファイバー1回線あたりの単価は月額690円にまで引き下げられるという。
松原氏はIP放送の著作権処理問題にも触れ、「著作権法の全面改正も視野に入れている」と断言した
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この提案に対し、松原氏は「ほかの企業にも試算をさせたところ、単価は少なくとも1000円以下になるとのことだった。既存のADSLよりも安く、しかも通信速度が速いというのは魅力的であり、根拠もある数字だ」と認める。しかし、今後モバイルWiMAXやウルトラワイドバンド(UWB)などの高速な無線通信技術が実用化されることを考えると、光ファイバーをあまねく世帯に普及させることが国家戦略として最も正しい判断であるのかという点に疑問を感じるというのだ。
さらに、ソフトバンク案では1社が独占的に光ファイバー網を敷設し、提供することにも、「非効率となる恐れがあり、競争があったほうがいいのではないか」と懸念を示した。
松原氏はこのほか、NTTグループの解体論についても触れた。「現在のNTTのスキームは10年前に決まったもので、これほどVoIPが普及することなど想定していなかった」(同氏)と分析。その上で、固定通信と移動体通信の融合(FMC)が注目されるなかであえてグループをばらばらにする意味があるのかといった点や、NTTがすべての国民に平等にサービスを提供する「ユニバーサルサービス」の義務を負っていることに触れ、「懇談会では現在のスキームの延長上で資本分離をするといった議論にはならない。スキーム自体の見直しが必要だ。大胆な改革は避けられない」とした。
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