取り付けを完了したら、さっそく試聴だ。試聴には、もっとも標準的に使われると思われる「iPod nano」を使用した。
まずは、ジャズ。ハービー・ハンコックの9年ぶりのアコースティックジャズ作品「リヴァー〜ジョニ・ミッチェルへのオマージュ」から「リヴァー」を聴く。
さっと聴いただけで、音のクリアネスに驚かされる。とくに、ドラムのブラシの音が信じられないくらい明瞭。スネアドラムのヘッドを擦っている音と、アタックしている音が明確に分かれて、リズムが立ってくるのだ。低音域もふくらまずしまっている。
ウッドベースの胴鳴りも感じられるし、ウッドベースの指板に弦がこすれる音まで聞こえてくる。アルペシオを刻むギターの音も、強い部分と弱いアタックの表現の違いまで、よく分かる。心地よく、きらびやか、しかも聴きやすい。
続いてクラシック。日本人ヴァイオリニスト千住真理子の最新作「Air」から「Furinkazan Taiga Ryuryu」を、通常の2倍256kbps AACでエンコーディングしたiTunes Plusでダウンロードした。
頭のバイオリンソロから、いきなり別世界に連れて行かれる。ドラマティックで悲壮な旋律が、かすれた鳴き声のように切なげに広がるのだ。余韻と表現力が他のヘッドホンとは段違い。録音した部屋の広さが見えてくるようなリアリティ。倍音成分の豊かな響きが聞こえてくるのだ。
バックにオーケストラが加わっても、ダイナミックレンジも広く、力強く、空間もうまく表現できる。鳥肌ものの音だ。音楽そのものの美しさがダイレクトに伝わってくる。
最後に、ロック。ジミーペイジ監修の元にリマスターしたレッドツェッペリン「MOTHER SHIP」から「ブラックドック」を聴く。クラシックを聴いたときにあまりに良かったので、これはクラッシック専用のヘッドホンだろうと、先入観で決めつけていた。ロックには、少し柔らかすぎるのではないかと。
だが、聴いて驚いた。頭のロバート・プラントのシャウトから情報量の多い鮮明で迫力のある音に圧倒される。ボーカルを重ね、リバーブを微妙にいじるスタジオ作業が見えてくる。ボーカルに続く、ギターのリフも異なるエフェクターを使って音を重ねて、微妙に歪みを変えている。低域もエネルギがありながら、解像感も高い。
ギターとまったく同じリフを弾くため、普通のヘッドホンでは、ギターに音が被さってしまうベースが、きちんと分離して聞こえてくる。しかも、これらが眼前で繰り広げられているかのようにリアルに迫ってくるのだ。
音楽の表現力ももちながら、情報量が豊富。最高級インナーイヤー型として、完成度は極めて高い。バランスド・アーマチュア・ドライバーを採用しているので、能率も高く、ボリュームは中程度でもかなりのエネルギーを得られる。
カナル型なので、歩きながら聴くのはさすがにつらいが、通勤電車の30分だけでも、いい音楽に没頭したいという人にはお勧めだ。だた、せっかくのハイエンド商品だし、ソフトの音質の違いも明瞭に出るので、デジタルプレーヤーで使う人は、圧縮率は低くしておいたほうがいいだろう。
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